WBCの侍ジャパンで、初の日系人選手としてプレーするラーズ・ヌートバー外野手(25)が大人気となっている。ヌートバーの母久美子さん(57)と中学、高校の6年間一緒にソフトボール部で汗を流してきたチームメートの金子清美さん(57)が、ヌートバー応援Tシャツをつくり、ジワジワと売れてバズり始めている。ソフトボール部時代の久美子さんについて金子さんに聞くと、ヌートバーとの共通点がいっぱい出てきた。

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金子さんと久美子さんは1978年(昭53)に新設された埼玉・東松山市立東中学に1年から入学。2人ともソフトボール部に入部した。金子さんが投手、久美子さんがそのボールを受ける捕手でバッテリーを組んでいた。久美子さんは榎田姓だったので、久美子さんは「えのき」というニックネームで今も呼ばれている。

全力プレーや、笑顔でメンバーと接する姿勢で人気者になったヌートバーは、どうやら久美子さんの影響を大きく受けているようだ。金子さんは久美子さんについて「誰にでも気さくに笑顔であいさつして、どんなに苦しい練習でも率先して声を出していた。チームのムードメーカーでしたね。中学のときはえのきがキャプテンで私が副キャプでした」と振り返る。

ともに地元の松山女子高に進学し、金子さんはそのまま投手だったが、久美子さんは「ちょこまかと走り回る器用なタイプ」(金子さん)で外野や遊撃手として活躍。チームは東日本地区の大会で4強入りするなど強豪校として知られた。

高校ソフトボール部同期は総勢13人。ソフトボール部の同期みんながソフトクリーム好き。そこでソフトクリームが「軟らかい」ことから同学年の集まりを「Yawara会」と名付け、今も交流は続いている。

久美子さんはバットを寝かして肩にかつぐような打撃フォームが特徴で、一生懸命にプレーをしているときにくちびるをややとんがらせて口が半開きになるクセがあって、富士山のような形になっていたという。テレビ中継でヌートバーもまったく同じフォームと口元なので、Yawara会の仲間で「左右の違いはあるけど打撃フォーム、似てるわ」「やっぱり口の富士山、同じだよね」「なんかDNAってあるんだ」とメールで意見交換して盛り上がっているという。

そのYawara会が身内でヌートバーを応援する意味を込めて自作Tシャツをつくった。ヌートバーの所属するカージナルスの本拠地セントルイスのブッシュスタジアムでは、打席に入るときにに観客が「ヌーイング」と称する「ヌーーー」とのうなり声で登場を歓迎する“儀式”がある。その様子について「NOOOOOOT」とのロゴを入れた公式Tシャツも販売されて大人気だという。

金子さんが「ぬぅぅぅぅぅと」にヌートバーの背番号「23」を入れて日本風にアレンジした。すると久美子さんから「公式Tシャツの『O』は6個。『ぅ』が5つだから、そこも公式に合わせて6つにしよう」という“指導”が入ってオリジナルの「ぬぅT」が完成した。2月27日からTシャツ製作サイトで身内向けに販売したところ、一般購入にも火がついて、販売1週間で60枚以上が売れるバズりっぷり。さっそく久美子さんも「ぬぅT」を着て東京ドームで応援していた。

オフィシャルグッズではヌートバー関連の欠品が相次いでいる。金子さんは「えのきの監修したTシャツ。多くのファンのみなさんにも着てほしい」と話した。Yawara会メンバーは「ぬぅT」に侍ジャパンのWBC王座奪還とヌートバーの活躍の祈りを込めた。2年後に迎える還暦イヤーに全員で「ぬぅT」を着て米セントルイスに乗り込んでヌートバーの応援をする目標も立てている。【寺沢卓】