藤井聡太竜王(王位・叡王・棋王・王将・棋聖=20)が渡辺明名人(39)に挑戦している、将棋の第81期名人戦7番勝負第3局が14日、大阪府高槻市「高槻城公園芸術文化劇場」で行われた。

13日午前9時からの2日制で始まった一戦は、14日、先手の渡辺が勝ってシリーズ初白星を挙げ、対戦成績を1勝2敗とした。第4局は来週21、22日、福岡県飯塚市「麻生大浦荘」で行われる。 渡辺は「必勝形」の角打ちに持ち込むまで1時間30分以上も考えた。「踏ん切りがつきませんでした。行く決断ができなかった」。腰を落ち着け、自陣の安全と藤井玉の詰み筋を何度も読み直す。冷静に、慎重に、勝利をたぐり寄せた。 対局は、角道を止めて雁木(がんぎ)に構えた藤井が、2日目の封じ手直後から攻め合いを挑んできた。矢倉の守備金をはがされ、リードを許す。藤井に緩手が出た直後、局面を逆転させて押し切った。「ここまで結果が出てなかったので、取りあえず良かったかな」。長考の述懐も今シリーズ初勝利後のコメントも本音だろう。 開幕局(4月5、6日、東京都文京区)を落として迎えた第2局(同27、28日、静岡市)。局面を悲観して心が折れ、連敗した。高槻入りした12日、「前回の負け方が良くなかった。途中でダメにした。それを繰り返さないよう、払拭(ふっしょく)できるような将棋を指したい」と抱負を語った。 過去の藤井との対戦成績は3勝18敗。勝利はすべて後手番だったが、今回初めて先手番で勝った。2020年(令2)の棋聖戦で敗れて以降、翌年の棋聖戦で挑戦を退けられ、22年王将戦、今年の棋王戦とことごとく敗れている。保持していた棋聖、王将、棋王を奪われた。反撃のきっかけになるかもしれない。 4年前に都内で行われた平成時代の将棋界を振り返るイベントで、渡辺はこう話している。「引き立て役になりたくない」。明らかに藤井を意識した発言だ。 「間を置かずに(第4局が)あるので、勢いをつけて頑張りたい」。史上最年少名人獲得を阻む。【赤塚辰浩】