藤井聡太竜王(名人・王位・叡王・棋王・王将・棋聖=21)が全8冠制覇を目指して永瀬拓矢王座(30)に初めて挑戦する、将棋の第71期王座戦5番勝負第1局が31日、神奈川県秦野市「元湯陣屋」で行われ、後手の永瀬が150手で勝ち、先勝した。藤井は黒星スタートとなった。王座5連覇を目指す永瀬は今回防衛すると王座の永世称号である「名誉王座」の資格を獲得する。9月12日に神戸市「ホテルオークラ神戸」で行われる第2局で、永瀬が連勝を目指す。
永瀬は藤井の得意とする戦型の角換わりを受けて立った。序盤、4一玉型早繰り銀という趣向を見せ、徹底的に研究していた展開に持ち込んだ。7筋の歩を突いて仕掛けたが、リードを奪われた。終盤、藤井の猛攻を受け続け、反撃のチャンスを待った。
永瀬の持ち味は相手の有効な攻めがなくなるまで受け続ける「負けない将棋」。最後は際どい寄せ合いを制した。
本年度の藤井は先手番で12戦全勝だったが、黒星をつけた。価値ある「後手番ブレイク」に永瀬は「先勝できてよかった。後手番だったので、どう突いていくかの将棋になった。自信がないかもしれないと思って指していた。ただ、大きく崩れていなければよいなと思っていた」と振り返った。
昼食に名物の「陣屋カレー(ビーフ&伊勢海老カレー)」を選んだ永瀬は、午後5時の夕食にも再び同じメニューを注文。気合の“ダブルカレー”で最強の挑戦者との夜戦に備えた。
これで藤井との対戦成績は6勝11敗。藤井が四段時代からVS(ブイエス=1対1の練習対局)を行う研究パートナー。タイトル戦で戦うのは22年の棋聖戦5番勝負以来、2度目となる。お互いの手の内は知り尽くしているだけに、タフなシリーズが予想されていたが、開幕局から1つのミスが負けにつながるギリギリの“死闘”を繰り広げた。
後輩棋士を研究会で鍛える姿が、新兵を鍛える鬼軍曹の姿とダブって見えたことから「軍曹」の異名を持つ永瀬。第2局に向け「先後も決まったので、しっかりと準備して挑みたい」。軍曹が「8冠」阻止を狙う。【松浦隆司】