9年ぶりの国賓待遇で米国を訪問している岸田文雄首相は10日夜(日本時間11日午前)、ホワイトハウスで行われたバイデン大統領夫妻主催の公式夕食会に出席し、スピーチを行った。タキシード姿の首相は、米人気ドラマシリーズで映画にもなった「スタートレック」のセリフを引用して場を盛り上げたほか、日本の国会ではみられないジョークを連発し、笑いを取る場面もみられた。

現地の報道などによると、岸田首相は冒頭で「私がここに来る前、私のスピーチが短すぎると言った人は誰もいなかった。これはおそらく良いアドバイスで、だから私は、スピーチを短くします」と口にし、会場はドッと沸いた。

さらに、夕食会の出席者の豪華な顔ぶれに「言葉を失った」とした上で、裕子夫人のコメントだとことわった上で「妻の裕子も『主賓がだれか見分けるのは難しい』と話していた。大統領の隣の席に案内されたときは、安心しました」とも語り、このフレーズにも会場は笑いに包まれた。

首相は昨年のG7広島サミットにバイデン大統領夫妻が訪れたことに触れながら、約60年前に当時の池田勇人首相がホワイトハウスを訪れた際、当時のケネディ米大統領が「太平洋は日本と米国を隔てているわけではなく、むしろ、それは私たちを団結させる」と語りかけたエピソードにも触れ「私たちの関係をこれほど目に見える形で表現したものはない」とたたえ、緊密な日米関係にも言及。「揺るぎない日米関係をさらに高め、次世代に引き継ぐための新たな境地に踏み出す歴史の転換点に立っている」とも訴えた。

岸田首相はその上で、「スタートレック」に登場するセリフ「だれも行ったことのない所へ、果敢に行く」に言及。「スタートレック」に登場する宇宙艦の名前に触れ「ちなみに、USSエンタープライズの操舵(そうだ)士、ヒカル・スールーを演じたジョージ・タケイも、広島にルーツがあります」と、自身のふるさとでもある広島との縁にも触れながら、「スタートレック」に登場するセリフ「Boldly Go!(果敢に行こう!)」で締めた。

岸田首相は、説明不足を指摘されるばかりの国会答弁ではなかなかみられないジョークのセンスや冗舌さを、ホワイトハウスで披露した形となった。