「神武以来の天才」と呼ばれ77歳まで現役最高齢棋士として活躍した加藤一二三(かとう・ひふみ)さんの訃報を受け、藤井聡太6冠(竜王・名人・王位・棋聖・棋王・王将=23)は日本将棋連盟を通じ、コメントを発表した。史上最年少14歳2カ月で四段になった藤井は16年12月24日のデビュー戦では、それまでプロ最年少記録(14歳7カ月)を保持していた加藤九段と対戦した。「信念を貫く姿勢をじかに学ばせていただいた」。「天才」から「天才」へバトンを渡す対局だった。
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藤井のデビュー戦の記憶は鮮烈だ。16年12月24日、プロ初戦は竜王戦予選1回戦。相手の加藤九段は当時、現役最年長の76歳だった。将棋界の新旧天才対決ともに当時14歳の藤井との「62歳差」対決も注目された。
加藤九段は得意戦法の「矢倉」を採用し、果敢に攻めたが、藤井の守りの的確さが光り、藤井が快勝した。勝利よりも「盤を挟んで、加藤九段の将棋に対する考え方であったり、信念を感じることができたのは大きな経験だった」。昨年末のインタビューでは26年にプロデビュー10周年の節目を迎えるにあたり、加藤九段との対局は、印象に残るベスト3うちの1つだと明かした。
公式戦での直接対決は1度だけだったが、訃報を受けた藤井は「長きにわたり将棋界を代表する棋士としてご活躍されたことに深く敬意を表するとともに、信念を貫く姿勢をじかに学ばせていただいたことに改めて感謝を申し上げます。心より平安をお祈りしております」とコメントした。
17年6月に現役を引退した加藤九段は大阪市内で行われたイベント後、記者の質問にこう振り返った。藤井との対戦が実現したことについて「あれは人間業ではなかった」といつものように早口で話し、将棋の神様が「天才」同士を引き合わせた対局だったと振り返った。「私が引退し、聡太さんが出てきた。例えば聡太さんが1年後に出てきても、全然つまらなかった」と独特の言い回しで「天才VS天才」の対局は偶然ではなかったと語った。
「趣味は藤井聡太」と語った加藤九段は、藤井の対局をすべて観戦した。日刊スポーツの紙面では、藤井のタイトル戦で「ひふみんEYE」を担当。「天才」しか分からない独特の視点は多くの将棋ファンを魅了した。生涯、ひたすら最善手を追い求めた「ひふみん」。勝負への姿勢を教わった藤井は、これからも「最善手」を指し続ける。【松浦隆司】

