藤岡康騎手がナミュールの末脚を引き出した。うまかったのは4コーナーのさばき。坂の下りで外からシュネルマイスターに馬体を合わされたが、慌てることなく内で我慢。ここで無理に動いていけば、大外へ振られるロスがあり、脚もたまらない。馬群の中にいた3着ジャスティンカフェの後ろを追うように、前との差を詰めた進路選択が最後に実を結んだ。

残り300メートル地点でエルトンバローズ、レッドモンレーヴの間を割って外へ。やや強引な乗り方(過怠金3万円)ではあるが「ここが勝負どころ」とばかりにちゅうちょせず、スピードを落とさずに突き抜けた勝負勘も大したもの。大外16番枠で難しさもあったと思うが、腹をくくって後方からしまいに懸けた思い切りの良さも光った。

差し切ってマイルCSを制するナミュール(中央)(撮影・前田充)
差し切ってマイルCSを制するナミュール(中央)(撮影・前田充)

ムーア騎手の落馬負傷で急きょの乗り替わり。人気の一角(5番人気)ということもあってかなりのプレッシャーがかかったと思うが、その中で冷静かつ大胆な騎乗ができたのは素晴らしい。普段からレースを見て研究し、自分ならどう乗る、というイメージトレーニングをしているから、代役にも戸惑いはなかったのだろう。

藤岡康騎手の絶妙なコース取りが、無冠のナミュールに悲願のG1制覇をもたらした。

差し切ってマイルCSを制した藤岡康騎手騎乗のナミュール(撮影・前田充)
差し切ってマイルCSを制した藤岡康騎手騎乗のナミュール(撮影・前田充)