3年ぶりに京都で行われる菊花賞は、2度の坂越えがポイントとなる。水島晴之「G1の鍵 その一瞬」は神戸新聞杯2着サヴォーナ(牡、中竹)に注目した。2400メートル以上で好走するスタミナと、折り合いを含めた操縦性の良さにコース適性を感じる。春のクラシックは不出走だが、実績不足を淀の3000メートルで埋められるか検証した。

神戸新聞杯でサトノグランツ(右から2頭目)に続き2着に入ったサヴォーナ(左から2頭目)
神戸新聞杯でサトノグランツ(右から2頭目)に続き2着に入ったサヴォーナ(左から2頭目)

サヴォーナは2月のゆりかもめ賞から、6戦連続で2400メートル以上の距離を使っている。青葉賞6着以外はすべて連対。ステイヤーとしての資質を見込んだ陣営の期待に、しっかり結果で応えてきた。

京都3000メートルはもちろん初めてだが、2度の坂越えをプラスにできる理由がある。長距離戦を乗り切るスタミナと、折り合いの良さだ。2走前の信夫山特別(福島2600メートル)に、この馬の強さが集約されている。ハナをたたいての逃げ切りだが、結果よりも内容に注目してほしい。

前半1000メートル通過は63秒6。2勝クラスでも遅い流れだが、掛かることなくスムーズに運んだ。しかもスタートの1歩目が遅く手綱を押して出していったにもかかわらず、田辺騎手が「物見した」というほど折り合っていた。この操縦性の良さがあれば、1周目の下り→スタンド前の歓声にも平常心を失うことはないだろう。

3角ではいったん後続に詰め寄られたが、4角手前からエンジンをかけ、直線はあっさり3馬身突き放した。スパッとは切れないがどこまでもばてずに伸びていく。この末脚の持続力が「下り」を味方にできる一番の理由。道中は折り合ってスタミナを温存。坂から惰性をつけてロングスパート。この馬の脚質がピタリとはまる舞台だ。

ダービー1、2着タスティエーラ、ソールオリエンスと決め手比べでは分が悪いが、このコースなら乗り方ひとつで勝負になる。以前は体が緩く、急激なペースアップについていけない面もあったが、神戸新聞杯ではラスト3ハロンで2回も10秒台を刻む高速ラップの中、サトノグランツと頭差の接戦を演じた。

確実に力をつけたし、太めをたたいて状態も上がってくる。これにコース適性が加われば、春の既成勢力を脅かす存在になっても驚かない。

【ここが鍵】過酷な条件、新興勢力も

京都の難所と言われる向正面から4コーナーにかけてのアップダウン。ここを2度もクリアしなければならない3000メートルは、3歳馬にとって過酷な条件だ。坂でリズムを崩したり、折り合いを欠けば最後の脚に影響する。逆に2周目の下りを利用してうまく加速できれば、上位入線の確率が上がる。

春のクラシック不出走馬で菊花賞を制した馬の中には02年ヒシミラクル、08年オウケンブルースリ、14年トーホウジャッカルなど下りで勢いをつけて栄冠を手にした馬もいる。皐月賞やダービーとはコース形態がまったく違うため、春の実績にとらわれず別路線を歩んできた新興勢力の台頭も頭に入れておきたい。

■サトノグランツ下りを味方に

神戸新聞杯を制したサトノグランツは、馬の後ろで脚がたまったとはいえ、ゴール前の脚は鋭かった。どちらかといえばエンジンのかかりが遅いタイプで、下り坂を味方にできるタイプだろう。実際、京都外回りは京都新聞杯を勝った実績がある。ダービーでは力足らずだったが、それでも0秒7差。5カ月たってその差は確実に縮まった。

■トップナイフ自在性が魅力

トップナイフもそれほど切れないが、長く脚を使える。札幌記念では向正面で内からスルスルとポジションを上げ、4角先頭からプログノーシスの2着に粘った。ダノンベルーガやジャックドールといった古馬一線級に先着したのだから大したもの。先行、差しどちらでも戦える自在性も魅力だ。仕掛けのタイミングひとつで上位争いに絡む。