最後の1秒まで騎手でいたい-。デビュー28年目の秋山真一郎騎手(44)が、2月いっぱいでムチを置き、3月から調教師に転身する。今回の「ケイバラプソディー ~楽しい競馬~」では、騎手引退を目前に控えた心境を藤本真育(マイク)記者が取材した。あと1カ月半のジョッキー生活にベテランは何を思うのか。胸の内を聞いた。

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「騎手に未練はある」。このひと言がずっと心に残っている。秋山真騎手には、引退まで残り1カ月半となった今、ジョッキーであり続けたいという思いが再び芽生えている。

13日小郡特別をダンツイノーバで制した秋山真一郎騎手
13日小郡特別をダンツイノーバで制した秋山真一郎騎手

「昔から騎手は憧れだったし、なってからは永遠に騎手でいられたら、と思っていた。でも、いつかは辞めないといけない。もう下手くそになって満足に乗れなくなってきていた。だから、引き際はここかなって決めたんだけど…。『俺は騎手じゃないとダメでしょ』と思う時がある」

騎手になるのが夢だった。元騎手の父忠一さんを超えてトップジョッキーに-。強い信念を持ってデビューし、2年目の98年に早くも重賞2勝。そこから15年連続で重賞を勝利するなど第一線を走り続けた。「小さい頃から憧れた理想の騎手像を長い間、続けられた。いい騎手人生だったと思う」。それでも未練があるのは、師匠・野村彰彦元調教師への思いもある。

野村彰彦元調教師(2009年撮影)
野村彰彦元調教師(2009年撮影)

「厳しい先生だったけど、1年目からプロのジョッキーとして接してくれた。何より、先生がジョッキーだった頃の話をいつも楽しそうにしていて『やっぱり騎手っていいんだな』と常に感じていた」

時を同じくして調教師試験に合格した田中勝春元騎手は昨年末で引退。秋山真騎手は期限いっぱいの2月末の引退を選択した。「最後の1秒まで騎手でいたい」。そこには幼少期の自分、そして師匠への熱い思いが詰まっている。

未練はあっても後悔はない。3月からは調教師として夢を見せる覚悟はできている。難関な試験を1回目で合格。受験を決めてからは、一切の迷いなく勉強に没頭した。「(馬に)乗っている暇はない。受かってみせる」と進み続けた。

「トレセンに夢をもらったし、騎手を辞めてもトレセンに残って恩返しがしたいと思っている。とはいえ、まだジョッキーだし、まずはそこに集中したい」

13日、ダンツイノーバと秋山騎手は直線で抜け出し小郡特別を制す
13日、ダンツイノーバと秋山騎手は直線で抜け出し小郡特別を制す

先週土曜の小倉10Rでは、11番人気ダンツイノーバで今年の初勝利を挙げた。そんな手綱さばきが見られるのもあと1カ月半。さみしい気持ちを心にしまい、騎手・秋山真一郎の集大成をこの目に焼き付けたい。(ニッカンスポーツ・コム/競馬コラム「ケイバラプソディー ~楽しい競馬~」)

◆秋山真一郎(あきやま・しんいちろう)1979年(昭54)2月9日、滋賀県生まれ。97年に栗東・野村厩舎からデビュー。2年目の98年神戸新聞杯(カネトシガバナー)でJRA重賞初勝利。12年にはカレンブラックヒルでNHKマイルCを勝利し、JRA・G1初制覇を飾った。15日現在でJRA通算1万3503戦1057勝。重賞38勝。うちG1・2勝。18年4月にはJRA全10場重賞制覇を達成した。