大盛況の背景は-。今回の「ケイバラプソディー~楽しい競馬~」は桑原幹久記者が初取材のセレクトセールを回顧する。2日間の落札総額が327億円となり、史上初めて300億円を超えた。平均落札額、1億円超え頭数、落札率などレコード連発のワケを掘り下げる。

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「高くて買えないよ」。熱狂の北国で、嘆きを何度も耳にした。「ヘイッ!」の声に連動して、1000万円単位の札束がぽんぽんと積み上がる世界。おのおのがそれぞれの狙い、予算で戦い、目当ての馬が落とせないと熱は他馬にスライドする。1頭あたりの落札額は初日の1歳部門が6909万円、2日目の当歳部門が7524万円。いずれも過去最高を更新し、底上げを裏付けた。

14日、セレクトセール初日を総括するノーザンファームの吉田勝己代表
14日、セレクトセール初日を総括するノーザンファームの吉田勝己代表

数字の変化を追ってみる。初日は42頭(昨年32頭)、2日目は44頭(同32頭)といずれも過去最高の“億超え”に注目が集まるが、今回は“億未満”に目を向ける。大きな変化は3点。2000万円台で1歳が17頭、当歳が7頭減り、6000万円台で1歳が6頭、7000万円台で当歳が9頭増えた。以前なら買えた層が値上がり、前出の嘆きにつながったといえる。

加えて、こんな声もよく聞いた。「この馬を買った馬主さん知ってる?」「初めて見た名前だな」。今年の購買者登録数は昨年比63増の871。5年前の20年647との比較なら、224も新規参入が増えた。熱狂の理由を日本競走馬協会代表代行の吉田照哉氏は「市場を支えているのは新しい馬主さん。高額の馬を買ってくれる人が増えてきた。常連の方はもちろん大変強い方たち。そう簡単に負けるかという感じなんでしょう」と新旧馬主の意地が交差した、と分析する。

日本馬が欧米・中東で活躍し“ジャパンブランド”が世界で定着。良血が日本に集い人材、育成レベルも準じて向上。人馬の発展が競馬の魅力を高め、高額所得者の参入意欲をかき立て、好循環になる。日本競走馬協会理事の吉田勝己氏が「いい馬はセリじゃないと買えない、ということが一番大事」と言えば、吉田照哉氏は「いい馬を持ちたいという気持ちに我々が応えて、提供することができたということ」とセールの発展に胸を張る。競馬でしか味わえない唯一無二の成功に心引かれる人がいる限り「高くても買いたい」と、熱は高まるばかりだ。

(ニッカンスポーツ・コム/競馬コラム「ケイバ・ラプソディー~楽しい競馬~」)