私にとって宝塚記念は難しいG1でした。正直なところ、まったく勝てる気がしなかったです。馬主さんからのリクエストがなければ、喜んで使うレースではありませんでした。

まずは時期の難しさがありました。順調であれば、ここへたどり着くまで春に2、3戦を走っており、秋に向けて休ませたいところでもあります。海外へ行きたければなおさらです。大阪杯が昇格するまでは他に中距離G1がなく、天皇賞・春を使わない馬にとっては間隔が空きすぎてしまう問題もありました。春のグランプリではありますが、ローテーションを考える中で切り捨ててしまいがちなレースでした。もし早い時期にあれば、もっと積極的に使っていたと思います。

さらに仕上げの難しさもありました。この時季は気温も湿度も高くなり、人間でも息をすると鼻や口から暑さを感じるほどですから、馬にとっても心肺へのダメージが大きいはずです。だから、つい弱気になって、ぎりぎりまで攻められなかったのはあると思います。すでに春に数戦を走って消耗した馬を、目いっぱいに仕上げるのが怖かったのもありました。

暑さ対策にはいろいろと取り組みはしました。最も大事なのはオーバーワークを避けることだと思います。あとは調教直後に水をかけたり、電解質の入った水を飲ませたり、体から熱をとるジェル状の素材で作られたラグ(馬着)をかけたりもしました。

牝馬の方が暑さに強いというのはあると思います。ウチの厩舎では牡馬を涼しい北海道へ持って行き、栗東に置いておくのは牝馬が中心でした。地理的なことをいうと、美浦であれば放牧先の山元トレセン(宮城県)やノーザンファーム天栄(福島県)が涼しいので、そこで仕上げるという方法もあるでしょう。ただ、栗東近郊の放牧先はわりと暑いので、なかなか難しいものがありました。

個人的にも、ダービーが終わると2歳馬のことで頭がいっぱいになって、この時期は集中力が切れてしまっていたのかもしれません(笑い)。いろんな意味で苦手意識のあるレースだったといえそうです。

■ホースパーク、オープン準備

角居氏がCOOを務める「みんなの馬株式会社」では、拠点とするタイニーズファーム(石川県珠洲市)の近くにホースパークのオープンを準備している。行政の支援を受け、放牧地や角馬場を整備。現在3頭の所属馬も増やしていく予定だ。角居氏は「7月末までに準備が整えば」と見通しを示した。

角居厩舎の宝塚記念成績
角居厩舎の宝塚記念成績