<天皇賞・秋>◇29日=東京◇G1◇芝2000メートル◇3歳上◇出走11頭

世界中のホースマン、競馬ファンも納得されたことでしょう。これがレーティング1位、現役世界最強馬イクイノックスです。強さを表現するいい言葉が思い浮かばないほど、強い。もちろん馬場の違いはありますが、芝2000メートルを1分55秒2で走る馬がどこにいるでしょう。まさに、スーパーホースです。

レコードで天皇賞・秋を連覇したイクイノックス(手前)とクリストフ・ルメール騎手
レコードで天皇賞・秋を連覇したイクイノックス(手前)とクリストフ・ルメール騎手

11年にトーセンジョーダンが記録した、これまでのレコードは1分56秒1でした。当時の前後半1000メートルずつのラップは56秒5-59秒6。後半が3秒1も遅いですから、前半が速すぎた、いわゆる「前崩れ」でした。一方、今回は57秒7-57秒5。11年ほどではなくとも速い流れです。実際、ハナを切ったジャックドールは11着ですし、道中で後方2番手のジャスティンパレスが2着、最後方のプログノーシスが3着。「前崩れ」のはずでした。

ですが、3番手にいたイクイノックスだけは崩れませんでした。そのままのペースで走りきってしまいました。その結果の1分55秒2。言葉になりません。

その馬上でルメール騎手は冷静でした。残り300メートルすぎで追い出し、右ステッキを入れた後に馬が少しラチ方向によれました。瞬時にステッキを持ち替えて左から軽く1発。そのステッキワークの速さ、万が一のアクシデントを未然に防ぐ進路修正。1ミリも油断していないことがわかる、完璧なエスコートでした。次走予定のジャパンCでは、3冠牝馬リバティアイランドと顔を合わせます。どんな競馬になるのか、今からワクワクします。

レコードで天皇賞・秋を連覇したイクイノックスとルメール騎手(撮影・丹羽敏通)
レコードで天皇賞・秋を連覇したイクイノックスとルメール騎手(撮影・丹羽敏通)

2着ジャスティンパレスは距離不足かと思っていましたが、中距離のこの時計に対応したのですから立派です。今後、イクイノックスを負かしにいくような競馬ができるかどうか、さらなる進化にも期待です。

7着のドウデュースは、武豊騎手の乗り替わりが残念でしたが、イクイノックスの直後につけて、ファンが納得できる競馬だったと思います。8カ月ぶりでこの時計の決着は、さすがのダービー馬も苦しかったはず。真価が問われるのは次走でしょう。(JRA元調教師)