クリストフ・ルメール騎手(43)騎乗の6番人気ヴェントヴォーチェ(牡5、牧浦)が直線で開いた内を突き、力強く抜け出した。勝ち時計は1分9秒1。

開業14年目の牧浦充徳調教師(48)とともに、3度目の挑戦でJRA重賞を初制覇。スプリント路線に新星が現れた。鞍上は6月下旬に海外渡航。今月日本に戻ってからは初の重賞タイトルを手にした。

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勝負どころの4角手前は横一線の団子状態だった。多くの馬が馬場が荒れていない外に出す中、ルメール騎手は馬群がばらけた内にヴェントヴォーチェを導いた。芝に傷みがあってもロスなく運び、メンバー最速上がり34秒0の鋭い末脚を引き出した。

初コンビを組んだ鞍上は「自分のリズムで運ぶと、いい瞬発力を使える馬。スタート後は前の馬が密集して後ろになったけど、だんだんとペースアップしてくれて3角手前からポジションを上げられた。最後はいつもの瞬発力を使ってくれました」。レース前から馬の特性をしっかり把握し、結果を出した。

ここ2走は重賞に挑戦して7着、9着。着順は振るわなかったが、3馬身差で完勝した4月中山の春雷S(リステッド)で高いスプリント能力を示していた。ロードカナロアのコースレコードに0秒1差に迫る1分6秒8をたたき出した。高橋助手は「もともと体質が弱かった馬ですが、今はしっかりしています。今日のレースも精神力がすごかったですね」と心身の成長を実感した。

重賞タイトルを手にして、スプリンターズS(G1、芝1200メートル、10月2日=中山)への優先出走権を獲得。次走は未定だが、今後は大舞台での戦いが待ち受けそうだ。ルメールは「スプリンターは年を重ねて強くなる。さらに上のレベルでもいけると思う」と太鼓判を押した。夏の北海道から、楽しみなスプリンターが誕生した。【井上力心】

◆ヴェントヴォーチェ ▽父 タートルボウル▽母 ランウェイスナップ(ディスタントヴュー)▽牡5▽馬主 エデンアソシエーション▽調教師 牧浦充徳(栗東)▽生産者 下河辺牧場(北海道日高町)▽戦績 12戦6勝▽総収得賞金 1億3391万8000円▽馬名の由来 風の声(伊)