メイケイエール(牝4、武英)が淑女の走りで完勝を果たした。

池添謙一騎手(43)を背に課題の折り合いに進境を見せ、最速の上がり32秒9で差し切って1分6秒2のレコードV。ソダシと並ぶ現役最多タイのJRA平地重賞6勝目を挙げ、次戦のスプリンターズS(G1、芝1200メートル、10月2日=中山)で念願の頂点に挑む。

   ◇   ◇   ◇

ゴールでは追う手を止める余裕まであった。念願のG1へ王手だ。たてがみの編み込みと脚長の馬体を躍らせ、ラスト100メートルは独走。秋晴れの下で拍手のエールに包まれた。文句なしだ。検量室前へ引き揚げてきたメイケイエールの馬上で、池添騎手は右手を挙げて満足を表現した。

「あまりせかさずにと思ったら、あの位置がキープできた。勝負どころでは少し動かしていくぐらいの追走ができた。今日は(折り合いが)楽でした」

最速の上がり32秒9、2馬身半差、レコード0秒5更新。あらゆる数字が完勝を物語る中で、何よりの収穫は折り合いだった。まじめすぎるがゆえ常に前の馬を抜かそうとするのが課題だったが、頭を上げて荒ぶることもなく、道中は5番手で我慢した。セールで滞在中の米国から見守った武英師も「外めの位置どりで折り合ったのは初めて。1歩ずつ成長してくれている。G1どりに王手という感じです」と声を弾ませた。

4歳秋を迎え、心身ともに完成へ近づいてきた。14キロの馬体増について鞍上は「成長分だと思う」。当週の追い切りで4カ月ぶりにまたがった瞬間、股下から充実が伝わってきたという。次戦はもちろんスプリンターズS。中2週で中山への輸送を控えるが、トレーナーは「キチキチの仕上げはしていない。少しおつりを残せている」と心配していない。

周囲を困らせてきたかつての天才少女にも、今や女王の風格が漂いつつある。池添騎手もエスコートに自信を深めた。「いい形で本番へ向かえる。あとはG1タイトルだけ」。戴冠へ準備は整った。【太田尚樹】

◆メイケイエール ▽父 ミッキーアイル▽母 シロインジャー(ハービンジャー)▽牝4▽馬主 名古屋競馬(株)▽調教師 武英智(栗東)▽生産者 ノーザンファーム(北海道安平町)▽戦績12戦7勝▽総収得賞金3億1306万円▽主な勝ち鞍 20年小倉2歳S(G3)ファンタジーS(G3)21年チューリップ賞(G2)22年シルクロードS(G3)京王杯SC(G2)▽馬名の由来 冠名+応援