世界で鍛えた腕っぷしで、歴史をつくった。英国出身でオーストラリアを拠点とし、短期免許で騎乗するレイチェル・キング騎手(33)が3番人気チャックネイト(せん6、堀)を重賞初制覇に導き、外国人女性騎手初のJRA平地重賞勝利を達成した。勝ち時計は2分16秒6。

女性ジョッキーのJRA平地重賞勝利は19年藤田菜七子騎手(カペラS)、22年今村聖奈騎手(CBC賞)に次ぎ3人目となった。

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泥土をはねのけ、気合と根性で勝ち切った。最後の直線、キング騎手がチャックネイトに右ムチをしならせる。上体を低く首筋に合わせ、豪快な上下動を繰り返す。1度は外から差されたボッケリーニに内から再接近。ゴール寸前、首の上げ下げの差で鼻差差し返した。「瞬発力の差でついていけなかったけど、坂を上りながらスタミナとファイトを見せてくれました」。3度目のJRA重賞挑戦で願いをかなえた。

豊富な経験が結果を裏付ける。英国でキャリアを始め、14年からオーストラリア・シドニーを拠点に。見習い騎手時代を含め15カ国以上で騎乗し、各国の違いを血肉とした。「シドニーにはいろいろな騎手が短期免許で来ますし、毎週レベルの高いレースでレベルアップができているので、それが日本でも生きていると思います」。

昨夏札幌で開催されたワールドオールスタージョッキーズで初来日。第1戦で勝利を挙げるなど女性騎手として最高位の総合2位に食い込んだ。年始から短期免許を初取得。JRA通算43戦6勝、勝率14%、連対率18・6%と日本競馬に即順応した。「オーナーサイドや受け入れ先の堀厩舎のサポートは大きいです」と感謝を忘れない。

刺し身、天ぷらが好物で日本文化にもすぐに染まった。今回の短期免許は3月5日まで。「重賞を勝つことは特別な思いですし、キャリアとしてはプラス。(外国人女性騎手のJRA平地重賞勝利が)初めてということを聞いて光栄です」。府中のターフでも、青い目を持つ女性ジョッキーが躍動する。【桑原幹久】

◆外国人女性ジョッキーのJRA平地重賞騎乗 米国のJ・クローンがファントムブリーズ(14着)に騎乗した90年ジャパンCが最初。以降はニュージーランドのL・クロップとL・オールプレス(旧姓L・マンビー時代含む)、C・パコーとM・ヴェロン(フランス)、H・ドイル(英国)、キングと7騎手が挑んだ。今回がのべ23回目の挑戦で初制覇。なお、これまではロシェル・ロケット騎手(ニュージーランド)が02年にJ・G1の中山大障害(ギルデッドエージ)を勝ったのが外国人女性騎手、唯一のJRA重賞Vだった。

◆レイチェル・キング 1990年7月31日、英国生まれ。06年に英国騎手免許を取得。14年にオーストラリアへ渡り、18年スプリングチャンピオンSでG1初制覇。22年にはシドニーCを女性騎手として初めて勝利。昨年はタンクレッドSなど豪G1を3勝。154センチ、51キロ。

◆チャックネイト▽父 ハーツクライ▽母 ゴジップガール(ダイナフォーマー)▽せん6▽馬主 金子真人ホールディングス(株)▽調教師 堀宣行(美浦)▽生産者 社台ファーム(北海道千歳市)▽戦績 15戦5勝▽総獲得賞金 1億4502万7000円▽馬名の由来 人名より+人名より。

◆馬主・金子真人ホールディングス(株)(金子真人名義を含む)のAJCC成績 19年シャケトラ以来の通算2勝目。98年から27年連続のJRA重賞勝ちとなった。JRA重賞は23年10月のスプリンターズSをママコチャで制して以来、通算113勝目。