友人に勝利をささげた。2番人気ジャスティンミラノ(牡、友道)がレコード勝ちで1冠目を制した。

戸崎圭太騎手(43=田島)は10日に死去した藤岡康太騎手(享年35)への思いを胸に、好位外からゴールに導いた。勝ち時計は1分57秒1。3戦3勝、昨年に続く無敗の皐月賞馬誕生。涙をぬぐいながら勝利を喜んだ友道康夫師(60)はダービー(G1、芝2400メートル、5月26日=東京)での2冠挑戦を明言した。

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勝者の両目は赤く、潤んでいた。亡き戦友を思いながら、戸崎騎手は声を詰まらせた。

「最後のこの差は康太が後押ししてくれたのかな。康太も喜んでくれていると思う。ありがとう、お疲れさまと言いたい」

途切れながらも、言葉を紡いだ。ジャスティンミラノの2週前、1週前の追い切りに乗っていた藤岡康太騎手は10日に息を引き取った。レースを終え、いつもの笑顔が脳裏に浮かぶ。2着馬とのわずかな首差は、きっと友人が背中を押してくれた。自分に言い聞かせるように、勝利を天にささげた。

今年も無敗馬は強かった。前半1000メートルの通過時計にスタンドがどよめく。メイショウタバルが刻んだ数字は57秒5。戸崎騎手は4番手の外を選んだ。事前の打ち合わせは位置にこだわらず、外々を回ること。フットワークの大きい馬。ペースが速くても、持ち味を消さぬようリズムを守った。「3、4角で戸惑うのかなというところがあったけど、最後はハミを取って伸びてくれた」。直線を迎える前にムチが入ったが、急坂を駆け上がって、またギアが上がる。早め先頭のジャンタルマンタルを捉え、猛追するコスモキュランダを押さえ込んだ。

1分57秒1。1拍置いて、赤い「レコード」の文字がともった。共同通信杯に続く重賞連勝、3戦無敗。初の中山も、コーナー4回も、この日馬体重が10キロも増えていた512キロの鹿毛馬はこなしてしまった。戸崎騎手は「いろんな課題がありましたが、全てクリアしてくれた。ポテンシャルの高い馬」と賛辞を重ねた。

2冠を意識せずにはいられない。レースを終えて東京向き、いやダービー向きの思いを新たにした。「皐月賞を勝ったことで上位というか、狙える器。責任を感じています。巡り会えたことに感謝しつつ、日々を過ごしたい」。これまでは18年エポカドーロ、19年ダノンキングリーとの2着2回が最高着順。初制覇は仲間と一緒に-。6週間後の頂上決戦での勝利を固く誓った。【松田直樹】

 

■ジャスティンミラノ▽父 キズナ▽母 マーゴットディド(エクシードアンドエクセル)▽牡3▽馬主 三木正浩▽調教師 友道康夫(栗東)▽生産者 ノーザンファーム(北海道安平町)▽戦績 3戦3勝▽総獲得賞金 2億7482万1000円▽主な勝ち鞍 24年共同通信杯(G3)▽馬名の由来 冠名+イタリアの地名