我慢、我慢の復活劇だ。3年連続参戦の10番人気トップナイフ(牡5、昆)が、2度の膝蓋(しつがい)手術を乗り越え、重賞初制覇を決めた。22年萩S以来、自身1023日ぶりの白星。勝ち時計は2分1秒5。鞍上の横山典弘騎手(57)は今年の重賞初勝利。約20分前に中京記念を勝った横山武史騎手と「親子同日重賞制覇」を果たした。2着に2番人気ココナッツブラウン、3着に13番人気アラタが入り、3連単は130万円超の大波乱となった。

    ◇    ◇    ◇

「やったぁ!」「ホントによかった!」。ベテラン横山典騎手が、トップナイフの上で無邪気に笑った。漆黒の首筋に沿い頬をこすり、格別な1勝をかみしめた。「いつも勝つとうれしいですけど、特にこの馬とは若駒の時からずっと付き合ってきた。やっと復活してくれてうれしかったです」。表彰式後、馬上から両手を上げて飛び降りる「フライングディスマウント」で場内をわかせた。

道は険しかった。トップナイフはホープフルS2着など2歳時から活躍したが、当時から両前脚の膝蓋骨に脱臼癖があった。発馬時に「膝のお皿」が時折外れ、出遅れる。菊花賞でも起こり14着。直後に同骨をはめ込む手術を受けるが完治に至らなかった。4走前を走った後に2度目の手術。今度は同骨を除去した。昆師は「遠回りになったけど元々奥手タイプ。順調でもここまで時間はかかったかもしれない」と“けがの功名”だと今は捉える。

復帰後2戦は2桁着順。横山和騎手が拠点の札幌から函館に移動し、1週前追い切りに乗った。横山典騎手は「和生からいいよ、と聞いていました。返し馬も今までで一番よかった。自信を持って乗りました」と復調を感じ取った。レースは五分にスタート。後方の内で息を潜めた。他馬が避ける内をするすると進み、位置を上げた。前を行く馬を残り50メートルで捉えた。外から伸びた2着馬を1馬身退け、鞍上は“してやったり”と左手親指を上げた。

大舞台が見えた。地元札幌の大レースを勝った安原浩司オーナーは「私にとって特別なレース。チームみんなのおかげで秋も楽しみです」とG1参戦を心待ちにした。横山典騎手は感謝と希望で締めた。「結果が出なくてもずっと厩務員さん、調教師もオーナーも我慢して、僕の好きなようにやらせてもらった。それに馬もちゃんと応えてくれた。この後軌道に乗れば大きな花を咲かせられると思います」。すべては勝利のために。これからも我慢を重ねる。【桑原幹久】

◆トップナイフ ▽父 デクラレーションオブウォー▽母 ビーウインド(スピニングワールド)▽牡5▽馬主 安原浩司▽調教師 昆貢(栗東)▽生産者 杵臼牧場(北海道浦河町)▽戦績 19戦3勝▽総獲得賞金 1億9624万3000円▽馬名の由来 超一流の技術