「メイショウ」の冠名で知られる馬主・松本好雄オーナーが8月29日に膵臓がんのため亡くなった。87歳だった。代表取締役会長を務めていた株式会社きしろが2日に発表した。葬儀・告別式は近親者のみで執り行われ、後日、お別れの会が行われる予定。

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“小倉の鬼”と称されたメイショウカイドウを管理した坂口正大元調教師も松本オーナーの訃報に絶句し、長年にわたる付き合いをゆっくりと振り返った。

「6月の宝塚記念をメイショウタバルで勝たれた際に、検量室前や表彰式でのお元気そうな姿をテレビで拝見し、すぐにお祝いのはがきを送ったんです。画面越しとはいえ、お見かけしたのはそれが最後になりました。(8月23日に)2000勝を達成された時に競馬場へお越しになられていなかったので、どうされたのだろうと思っていたんですが…。本当に残念です」

一番の思い出はやはりカイドウでの重賞5勝。とはいえ、祝勝会は1度も同席していないという。

「私は宴席も好きですし、人付き合いが悪いわけでもないんですが、いろんな馬主さんとの人間関係の中で“メイショウさん”(松本オーナー)の席には呼ばれなかった。といっても冷たくされていたわけではなくて、いろんな事情をメイショウさんが理解してくださっていたんです。カイドウの後も毎年のように馬を買っていただいたし、預けていただいた。馬主さん同士の嫉妬というか、そういうものもあった時代でしたが、メイショウさんは当時からそういうものは一切なかった。分け隔てすることはなかったですね」

兵庫県明石市出身の松本オーナーだが、坂口元師には近江商人のように見えていたという。

「近江商人の『三方よし』というのがあります。売り手によし、買い手によし、世間によしという近江商人の経営哲学です。競馬の世界でいうと、売り手は牧場であり、買い手はメイショウさんご自身、そして世間は厩舎やJRA、ファンとなるのでしょうか。売り手と買い手がともに利益を得て、それが社会全体の幸福にもつながる。そんな現代にも通じる商売の鉄則をずっと続けてこられたのがメイショウさんでした」

だからこそ、大オーナーの急逝に、坂口元師は今後の日本競馬への影響を案じる。

「たくさん馬を買う馬主さんはいますが、メイショウさんほどの人格者は珍しいと思います。中小のセールにも赴いて、たくさんの馬を購入する。生産界にとっても、われわれ厩舎関係者にとってもありがたいことでした。メイショウさんほどの大オーナーはもう現れないかもしれません。それだけに本当に残念ですし、惜しい方をなくしたと思います。心よりご冥福をお祈り致します」