越後伝衛門/新潟市
「造りが始まるとわくわくします」と尾崎さん。酒造りは3人で行っている

 杜氏となって7年目になる尾崎雅博さんは東京都小平市出身。高校卒業と同時にこの蔵に入った。なぜ新潟へ? 「酒造りがしてみたくて、たまたま週刊誌にこの蔵の広告が出ていたので、就職活動の第一歩のつもりで社長に手紙を書きました」と振り返る。酒造りに熱意を燃やしていたわけではなく、父親が飲んでいて幼い頃から身近にあった日本酒が米と水からできることを不思議に感じていて、自分でも造れるのでは、という軽い気持ちからだったという。運よく面接までこぎつけ、社長から「10年やめないならば来ていい」と言われ入社。現在18年目になる。10年目には新潟清酒学校に入学し、同じ年に杜氏となった。が、1年目の酒は「ひどいものでした。香りがない、口当たりがぴりぴりする、色がついている」と〝最悪の酒〟を評価する。

 この、杜氏として初めて手がけた酒と同じ種類のものが今回の1本「純米吟醸伝衛門」だ。杜氏7年目の純米吟醸は「口当たりの良さとあと味のキレがある飲みやすい酒です」と尾崎さん。越後伝衛門の中でも1番人気の酒だ。自分が納得のいく形になってきたのはここ数年だという。「杜氏3年目までは『酒ができた』でしたが、最近は『酒を造った』といっていいかな」と手ごたえを言葉にする。

 外からの評価も確実に高くなっている。7月に審査があった「スローフードジャパン燗酒コンテスト」のプレミアム燗酒部門で「純米吟醸」が見事最高金賞を受賞した。もうすぐ今季の造りが始まる。吹き始めている追い風をより確実なものにしていくことが、尾崎さんの今季のテーマだ。【高橋真理子】

[2016年9月17日付 日刊スポーツ新潟版掲載]