1回裏阪神無死、中越え本塁打を放つ近本(撮影・上山淳一)
1回裏阪神無死、中越え本塁打を放つ近本(撮影・上山淳一)

阪神はボーアが打ち始めたが、得点力につなげるには1番近本にかかっている。「2年目のジンクス」にぶつかる中で初回に積極的に打ちに行き、先頭打者本塁打を放った。持ち味が出た打席でもある。だが2打席目も初球を打ち三邪飛、3打席目もファーストストライクから振った。3打席で計9球中8球もスイング。積極性を否定はしないが、どういう1番を目指しているのかが見えない。

ルーキーの昨季は活躍したが出塁率は3割1分3厘。今季も不振で2割5分だ。1番なら3割5分以上は欲しい。1番の出塁率はチームの得点力に直結しやすいからだ。固定できていない巨人は2番坂本、3番丸が出塁率が高いタイプで例外だが、DeNAは梶谷、ヤクルトは坂口が4割を超える。その3チームがセ・リーグの平均得点で上位を占めるのは必然だ。

同じ先頭打者弾を放った梶谷は対照的だった。近本同様に積極的な打者だが打席ごとに使い分けられる。1、3打席目はファーストストライクを見逃し、2打席目は初球攻撃。相手捕手からすれば初球から振られるのは嫌らしさも感じるが、頻度が多いとマークして攻め方は立てやすい。逆に打席ごとに違うと、ボールから入って様子を見てカウントも悪くなり、結果的に出塁する可能性も増える。

自分のセールスポイントが何か、その裏にある欠点は何か。長所と短所は紙一重だ。それを自覚して使い分けできなければ一流にはなれない。狙い球を思い切って振ることは大事だが、狙い球を「絞って」思い切って振ることも加える必要がある。さらに勇気を持って捨てることも「思い切り」だ。4連勝の阪神は上向きだが、その中でも1番近本はペナントレースのカギを握る1人でもある。(日刊スポーツ評論家)

1回裏阪神無死、近本は中越え同点本塁打を放ち笑顔を見せる(撮影・上田博志)
1回裏阪神無死、近本は中越え同点本塁打を放ち笑顔を見せる(撮影・上田博志)