技術的なことを言えば、大山の軸足にいい意味で変化が見られる。以前は右足のかかとが、早く浮いてしまい、本来体重を乗せるべき親指ではなく、小指にウエートがかかっていた。これでは、右肩が早く出てしまうし、スイングにブレが生じる。巨人岡本はベタ足のように見えるが、だからこそ地面を力強く蹴れる。かかとが早く上がれば、思い切り振れない。今の大山は、その部分が良くなってきた。

今季貫いてきたスタイルが、打撃フォームにいい影響を与えている。大山は入団当初、初球からどんどん振っていた。それがいろんなことを考え始めて、ボールを見過ぎて、思い切り振れない傾向にあった。今年は球種を絞らず、初球からタイミングを取って、甘いボールに振っていく姿勢を貫いている。まずは思い切ってバットを振ることを念頭に置いているのだろう。来季以降は相手投手との駆け引きなど配球面も向上していく必要があるが、今季は今のスタイルを貫くべきだ。本塁打王争いで、周囲も騒がしくなるが、いかに今の打撃を続けられるかにかかってくる。振れるバッターになった、という状態でシーズンを終えれば、来季はさらに飛躍が期待できる。

首位巨人とは11・5ゲーム差で優勝争いは現実的に厳しい。それでも、個人的な目標が多い方が、チーム内の緊張感は持続する。大山もそうだし、西勇も防御率のタイトルを狙える。防御率にこだわれば、チームの勝利につながるし、守っている野手もピリッとする。そういうふうに、目の前の試合に集中しながら、白星を重ねてほしい。(日刊スポーツ評論家)