キャンプ視察の楽しみの1つに、若手の成長がある。そこで気になったのが、広島で3年目を迎える小園。今季の飛躍が期待される若手が2軍スタート。そこで、宮崎の広島2軍キャンプに立ち寄ってみた。

守備練習しか見る時間がなかったが、体は大きくなっているように見えたし、動きも悪くない。ケガをしている感じもなかった。おそらく野球に取り組む姿勢を問題視されたのか、奮起を促すための2軍スタートだったと感じられた。

自分自身の若い頃を思い出した。プロ入り2年目ぐらいまで、1軍でベンチ入りしていても「お前に試合は関係ない。将来のために鍛えるんだ」と大石(友好)さん(当時の西武コーチ)に言われ、徹底的に走り込みをやらされた。試合前のミーティングでは疲れ果て、眠くなるほどのハードメニューだった。「そんなに練習しなくても、試合に使ってさえしてくれれば結果は残せるのに」と思いながら“やらされる練習”をこなしていた。

4年目を迎える頃、「このままではクビになる」と焦りだした。特に打撃においてはプロの壁にぶつかっていた。今までは何も考えずにバットを振っていただけだったが、それでは限界があることに気付いた。当時、打撃コーチをしていた金森(栄治)コーチに打撃理論を教えてもらった。それでも一朝一夕にはいかない。どんなに素晴らしい理論があっても、それを実践するためには反復練習が必要。ちょっとやそっとでバテない体力がなければいけない。その時に役立った体力は、“やらされていた練習”で培ったものだった。

近年では走り込みなどのハードな練習を否定する人もいる。確かにもっと効率のいい練習もあるだろう。しかし若い頃の私のように、それが分からない選手には「将来のため」と言って無理やりやらせるコーチがいてもいい。大石さんがいなければ、今の私は存在していなかったし、今ではとても感謝している。

小園の2軍スタートは、単純に「おきゅうをすえる」ためなのかもしれない。そこでくじけたり、ふてくされて消えていく選手はたくさんいる。しかし1軍で活躍するために足りない“何か”を補うための考えが、広島の首脳陣にはあるのだろう。小園の奮起に期待している。(日刊スポーツ評論家)