阪神は首位決戦の勝負どころで、最も大事な一戦をモノにできず、後退した。

山田 両チームが今、最も信頼の置ける高橋、奥川を送り出した対決だったが、奥川が投げ勝って、高橋が投げ負けた。前日7日のDeNA戦の先発伊藤将も中5日で、ローテーションの組み替えに苦心がうかがえた。チーム事情はあるにせよ、若い経験の浅い投手を詰めて投げさせないといけないところに負担を感じる。同じ中5日の高橋も絶対に負けられない重圧を感じただろう。ただ連続完封してきたことを考えると、もっと力で押す投球を期待していたから残念だった。

1回2死一塁。村上に適時二塁打で先手を取られたのは、1ボールからのカットボールだった。2回2死から西浦に浴びた左翼ポール直撃のソロ本塁打も同じ球種で、5回の塩見の右前2点打は真っすぐだった。

山田 昨年から感じていることだが、高橋はバタバタと三振を取ったかと思えば、試合によっては交わしにかかる投球をする傾向がみえる。どちらが高橋のスタイルなのだろう。押すでもなく、交わすでもなく、自分の投球を制御できていないようにも感じるし、そこがちょっと評価がしづらい。一方の奥川が6回ぐらいから球威が落ちたのは、若いのに軽くアウトを取る投球術をもっているが、目一杯に直球を投げ続けたからだろう。そこに2人の若いピッチャーの差が表れた。阪神は1、2番が機能しないと点が取れない。負けるときの典型的パターンだった。

前日のDeNA戦は8回に及川がソトに逆転本塁打を浴びて取りこぼした。この日は1点止まりだ。

山田 もはや勝ちパターンのリリーフを疲労、連投を理由に出し惜しみする時期ではない。ただ残り試合は、投手より、いかに得点力を上げるかだ。打つ、打てないというより、佐藤輝を起用する場面もあったはずだが、出番はなかった。阪神は負けられない局面に立たされた。【取材・構成=寺尾博和編集委員】

ヤクルト対阪神 2回裏ヤクルト2死、西浦に左越えソロ本塁打を浴びる高橋(撮影・鈴木みどり)
ヤクルト対阪神 2回裏ヤクルト2死、西浦に左越えソロ本塁打を浴びる高橋(撮影・鈴木みどり)