日刊スポーツ評論家で広島3連覇監督・緒方孝市氏(53)が7日、開幕11戦で1勝10敗と苦しむ阪神に「3つの提言」だ。(1)先発を減らしてでもブルペンを厚く(2)機動力野球への回帰(3)若手はチャンスの意識改革-。セ・リーグの戦いを知り尽くした緒方氏が同い年の矢野監督へのエールを込めて具体的な策を示した。【聞き手=編集委員・高原寿夫】

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ここまで苦しんでいる大きな要因はやはりブルペン陣が苦戦していることだろう。スアレスの穴をどうするかは開幕前からの課題だ。新外国人の起用はもちろん、若い投手を育てていくプランもあったはず。

そこがうまくいっていない現状をどうするか。まず割り切りが必要だ。阪神は先発スタッフが他球団に比べ、しっかりしている。青柳が抜けてもちゃんと組めていた。小川のブルペン入りを決めたようだが、これは同感だ。

私は小川はもちろん、藤浪もブルペン候補だと思っていた。先発を5枚にして中を厚くすることが今は大事。広島監督の1年目、中継ぎを整備するため、力のある先発投手の大瀬良をブルペンに回したものだ。

そうした場合、先発はどうするか。期間限定で中5日で回してもいいが1つの考えとして「若手起用枠」にしておく考えもある。思い切ってファームから上げる。そのときに大事なのはロングマンを用意しておくこと。最初に3失点とかしたら試合を壊さないように早い回から救援に行く投手のことだ。今なら桐敷が適任だろう。

あるいはファームから2投手を一気に昇格させ、2人で先発の仕事を任せるという手もある。投げたら抹消し、また別の投手を上げる。常に1枠空けておくという方法はあると思う。

大事なのは各投手に事前に勝ちパターン、ビハインドの展開など頼む役割をはっきり伝えておくこと。6日に打たれた斎藤はいい球を持っているし、早いイニングで使っていく方がいいだろう。各自に自覚させ、よければ入れ替えるということで競争にもなる。

打線はやはり迫力不足だ。マルテが故障。サンズもいない。糸井はベテランだし、いつまでやれるかという不安はある。大物打ちは佐藤輝、大山だけでここが徹底マークされると、また苦しくなる。

だからこそ以前のような機動力野球に戻るべきだ。矢野監督はそれを得意としていたし、近本、中野というところで走力を使って攻める。そこにマルテが戻ればバリエーションが増えるし、そこは強調したい。

苦しむ阪神、チームにとってはマイナスだが若手選手からすればチャンスだ。2試合ほど小幡がスタメンで出たが、いい働きをしていた。結果を出せば使ってもらえる。チームが好調なら出番は来なかったかもしれないのだ。

だからこそ各コーチは「ここはチャンスだぞ」と乗せていくことも必要だ。シーズンはまだこれからだし、そういう面から活気を取り戻していけばいい。

練習でキャッチボールする阪神藤浪(撮影・上山淳一)
練習でキャッチボールする阪神藤浪(撮影・上山淳一)