通算284勝をマークした元中日監督・山田久志氏(73=日刊スポーツ評論家)が、ロッテ佐々木朗の完全試合をチェックした。角度がついた「投球の出どころ」「上下のバランス」「体のしなり」「左足の踏み込みの強さ」など“3年目の進化”を論じた。【取材・構成=寺尾博和編集委員】
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素晴らしいの一語に尽きる。まさにねじ伏せた。球数が105球、日本タイ記録の19奪三振。かつての完全試合を振り返っても、一、二といえる内容で達成された偉業といえるだろう。
オリックスの打者が立った全27打席のうち、ファウルを含めてバットに当たったのは計35球。バットにかすらないのだから、いかにボールの精度が高かったかがうかがえた。
わたしは今の日本球界で最もバットコントロールが巧みな打者は吉田正と思っている。その男がコンタクトできなかった。この一戦に関しては佐々木朗が上回ったということだ。
吉田正が2打席連続でフォークに空振り三振を喫した後の第3打席目の対戦も印象的だった。2-2から今度は球速163キロのストレートだから、さすがの吉田正もお手上げだった。
高い上背、変化球が効果的な本拠地の特性もあるが、安定した“出どころ”から角度のついたストレート、フォークをベースに向かってたたきつけられると、そうは打ち返せない。大きな体で、ストレートとフォークの球種で自信をもって勝負ができる先発ピッチャーとしては野茂英雄を思い出した。佐々木朗もその体を持て余すことなく使いこなすことができている。
その投球フォームの特長は、左足を大きく胸元まで上げるところにある。本来はあそこまで上がらないし、バランスを崩すものだが、上下のバランスをとって自分にフィットした投げ方として身につけたのだろう。ダルビッシュ、田中らもトレーニングによって体がごっつくなっていくにつれて、できるだけ負担のかからないように、自身のフォームを変えていったのを見習ってほしい。
佐々木朗のフォームは投球直後に体勢が崩れ、開く、流れる、などと指摘する人の声も聞かれるが、それは間違った考えだ。ちゃんと投げきって、フィニッシュした後だから気にする必要はない。左足の踏み込みも強くなって、それがボールに伝わるようになった。また体に“しなり”がでてきたのは、トレーニングの成果で3年目の進化だろうと思いながらみていた。
この先、フォークを多投し続けると、どこかで右腕が悲鳴を上げるときがくることも考えられる。今後の肩、ヒジのケア、さらに強い体にスケールアップすることも必要になってくる。
また今は覚えなくていいが、“遊び”としてもう1つ球種を練習しておくのも、長く野球を続けるための手だ。柔らかいバックスイングをみていると、その気になればすぐにマスターできるはずだ。
オリックス臨時コーチだった当時、宮崎清武キャンプにきた新人だった佐々木朗が初めてブルペン入りした投球をみた後「東北から日本を代表するピッチャーになってほしい」と声を掛けたこともあった。
スター誕生だ。わたしが出身のパ・リーグからファンを魅了するピッチャーがでてきたのが、さらにうれしい。ロッテのエースから、日の丸を背負って立つ投手に羽ばたいてほしい。(日刊スポーツ評論家)




