阪神は延長11回の熱戦に敗れ、2位タイ浮上どころか5位に転落した。2回表裏に走守で痛すぎるミスが飛び出し、9回裏に1度同点としながら、最後は力尽きて4連勝を逃した。それでも日刊スポーツ評論家の鳥谷敬氏(41)は6回1失点と粘った先発才木、1点ビハインドの展開で無失点リレーを続けた救援陣を高評価。今後の上位浮上に向け、虎の強みを強調した。【聞き手=佐井陽介】

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阪神は走守に痛すぎるミスが飛び出した序盤の展開を考えれば、よく一打サヨナラの場面を作るまでゲームを持ち直したと思います。6回1失点と粘った才木投手、ビハインドの展開で無失点を並べ続けた救援陣の粘りは、本当に明るい材料と言えそうです。

個人的には才木の6回表に価値を見いだしました。5回表終了時点で球数は72球に達していました。1159日ぶりの復活勝利を手にした3日中日戦の球数は76球。まだ右肘手術明け2戦目ということもあり、首脳陣は続投か否かで迷ったのではないでしょうか。それでも1点を追う5回裏2死一塁、才木投手はそのまま打席に向かいました。この続投はある意味、先を見すえた上での「テスト」だったようにも感じます。

今回もし6回表に失点したり大崩れしていれば、首脳陣は今後同じようなケースで続投させづらくなったはずです。5回前後で代打を送った方がいい投手、というイメージもついてしまったかもしれません。そんな岐路となりかねなかった6回表、才木投手は無死一、二塁のピンチを招きながら無失点で切り抜けました。未来の可能性を大きく広げる1イニングになったと表現しても、大げさではありません。

もちろん、試合を作り直したのは才木投手だけではありません。1点ビハインドでバトンを託された救援陣の働きも特筆すべきモノがありました。7回は岩貞投手、8回は加治屋投手、9回は浜地投手が無失点リレー。3人はまだ勝ちパターンのメンバーには入っていませんが、全員が1点台の防御率だから驚きます。

今後コツコツと順位を上げていく上で、苦しい展開からどれだけ勝利を拾っていけるかどうかが大きなポイントとなってくるのは間違いありません。そういう観点で見れば、タイガース救援陣の層の厚さにはやはり魅力を感じます。

2軍にも実績のある島本投手や小林投手らが控えている状況。ビハインドの展開で登場する投手たちの質の高さは、夏場の上位浮上へ大きなアドバンテージとなりそうな気がします。(日刊スポーツ評論家)

◆2回表裏の痛恨ミス 0-0の2回表1死一塁、中日5番高橋周が放った左翼線二塁打のクッションボールを左翼陽川が後逸し、先制点を献上。直後の2回裏無死一、三塁、今度は7番陽川の浅めの右飛で三塁走者糸原が1度タッチアップ。無理だと判断したのか三本間の中間地点で引き返し、三塁に戻りきれずタッチアウト。まさかの併殺で好機をつぶした

阪神対中日 7回に登板の阪神岩貞(右)は三者凡退に仕留め笑顔で中野とグラブタッチを交わす(撮影・上山淳一)
阪神対中日 7回に登板の阪神岩貞(右)は三者凡退に仕留め笑顔で中野とグラブタッチを交わす(撮影・上山淳一)
阪神対中日 阪神3番手で登板した加治屋蓮は中日打線を1回無失点に抑えベンチに引き揚げる(撮影・上田博志)
阪神対中日 阪神3番手で登板した加治屋蓮は中日打線を1回無失点に抑えベンチに引き揚げる(撮影・上田博志)
阪神対中日 阪神4番手の浜地(撮影・上田博志)
阪神対中日 阪神4番手の浜地(撮影・上田博志)