<WBC:日本9-3イタリア>◇準々決勝◇16日◇東京ドーム
大不振だった村上が、貴重なタイムリーを放った。
ここまで苦しんでいた姿を見て正直、心配していた。「超」がつくほどの「負けず嫌い」。どれだけ悔しい思いをしているか想像できるだけに、素直にホッとした。
ただ、これで完全復調したかは分からない。最初の打席は初回無死一、二塁から大谷が遊撃ライナー、吉田が三邪飛。こう言ってはなんだが、3番と4番がアウトになって回ってきた打席。気楽に打てるかな、という気持ちで見ていたが、逆に「俺が決めてやろう」とガチガチに力が入っていた。最後は内角の真っすぐに見逃し三振した。
第2打席は四球を選んだが、第3打席は2点差に詰め寄られた5回無死一、二塁で回ってきた。ここで投手が代わったが、初球の真ん中低めツーシームをセンターオーバーの2点二塁打。逆らわずに素直に打ち返せていた。
この一打が、4番から外れたから打てたのか、単純に自分の感覚を取り戻したから打てたのか、判断できない。本番直前の強化試合でも「6番」に降格して左中間にホームランを打った。しかし、4番に復帰してからは再び打てる気配がしなくなった。それならば、準決勝でも4番に戻す必要はないと思う。
まず、短期決戦で固定観念にとらわれるのは危険。長いペナントレースならともかく、今試合で4番吉田は本塁打を打った。日本のベストメンバーがそろうのだから、4番を打てる技術を持つ打者は、村上以外にもいる。
昨年、56本塁打を打った村上が、なぜこれほどまで打撃不振に陥ったのか、私なりに考えてみた。最も考えられるのは、大谷の存在だろう。フリー打撃でも規格外の打撃を見せ、実力の違いを見せつけていた。誰もが「太刀打ちできない」と諦めるか、「自分は自分の打撃をする」と割り切る。そんな中、村上だけは同じ土俵の上で「負けたくない」と力みまくったのだろう。
現段階で大谷と村上を比べれば、実力は格段に違う。それでも「負けたくない」とムキになるのが村上であり、そういう気概があるからこそ、これだけのバッターに成長できたと思う。
第4打席も外野のグラブをはじくラッキーなヒットを放った。内容的には悪くないが、まだ本来のバッティングができているとも思えない。4番に戻す必要はないし、村上は4番に戻れないからといって、ふてくされたりするような選手ではない。むしろ4番に戻して気負わせるより、このまま悔しい思いをさせたままの方が、持ち前の反骨心を出してプレーできる。まだ23歳。この悔しさをバネにすれば、近い将来、「本物の日本の4番」に戻ってくる。(日刊スポーツ評論家)




