ファイナルステージ初戦でありながら、日本ハム新庄監督の視線は何を捉えているのだろう。大事な初戦先発を達に託す。日本シリーズ進出を狙うばかりか、来季リーグ優勝からの日本一という大目標への布石を、ここで打ったと感じた。
達は今季、主にロッテ、西武戦で勝ち星を挙げながら、自信と経験を積んだ。私は下位チームに投げては抹消し、再びロッテ、西武戦に合わせて昇格させるやり方を「投げ抹消」と表現してきた。それは、ひとつの育成の手法となり、達は見事に先発の一角を任せられる存在となった。ベンチの指導法のたまものであり、こうして投手陣を分厚くしてきた。ただ、新庄監督はそこで満足せず、この大切な一戦を任せる決断をしている。
達は今季ソフトバンク戦に1度先発も、5回5失点と打ち込まれた。このカードはその1度きり。それを、ここで先発に指名したところに深い意味を見る。オリックス戦ではなく、打ち込まれたソフトバンク戦の初戦に持ってきたところにこそ、強い意志を感じる。
初回、1死から柳町、栗原に連打され、さらに死球で満塁と苦しんだが、牧原大を併殺に打ち取る。真っすぐとフォークのコンビネーションは、達の切り札であり、この日も自分の持ち味だけにフォーカスした立ち上がりだった。
ここまで達の先発時は伏見が受けることが多かったが、9月27日のロッテ戦で達を完封に導いた進藤を先発マスクに抜てき。この2人で、王者ソフトバンクの出ばなをくじこうとするずぶとい策略は、大一番にふさわしい勝負手に映った。
達は6回を6安打無失点。シーズンの借りをしっかり返し、新庄監督の思惑に十分応えた。この達の好投がチームにもたらすものは大きい。達の下位チームに特化した先発起用からの脱皮を意味し、チーム内競争は一層激しくなる。
CSを戦いながら、来季も見据えた選手起用というのは、非常に難しい綱渡りだ。育てながら勝つ。それも短期決戦で、ペナントでは通用しなかったチームに迷わず投入する。こうなると、選手も覚悟が決まる。やるしかない。
復帰後すぐに5番起用の今川、モイネロとの相性から2番抜てきの山県。日本ハムベンチには一切の気の緩みはないだろう。勝敗こそがすべてのCSでありながら、新庄監督の戦略はずっと先を見ている。初戦は延長サヨナラ負けを喫したが、第2戦先発は22歳の福島。末恐ろしくすらある。(日刊スポーツ評論家)




