<とっておきメモ>

原口は復帰までの過程で、大好きな野球への「情熱」を再確認した。大腸がんの手術後、春季キャンプや高校野球の中継など、野球と名のつくものに貪欲に接した。中でも3月の東京ドームの一戦にテレビでくぎ付けになった。イチローの引退試合だ。「こんな引退、すごいな。ファンに愛されてる、イチローさんってすごい」。多くの選手が白球を追いかける姿がリハビリのエネルギーになった。

もう1度プレーする-。決して後ろを向かなかった。2年前からオフなどに体のケアを担当する近畿医療専門学校の本田誠さんは「計画通り、描いてきた通りに来ていると思います。その努力には尊敬しかない」と話す。退院後、筋肉は以前に比べて弱くなっていたが、原口はそれすらも前向きに考えた。「体が弱ったと捉えるより、体が柔らかくなったと捉えた方がいい」。入院してトレーニングが出来なかった期間は、体を休めることが出来た時間。2人でよくそんな話をしたという。

「ゴールデンウイークごろに復帰」を掲げ、ここまで計画的に1歩ずつ前進。4月の体力測定の数値が昨年を上回るなど、トレーニングの成果は目に見える形で現れた。コンディション面でも昨年12月のシーズン終了直後と比べ、体が軽く動きやすくなっていた。困難を乗り越えて、原口はさらに強くなって帰ってきた。【阪神担当=磯綾乃】