練習の成果が、顕著に現れてきた。オリックス若月健矢捕手(24)のバッティングが、着実にパワーアップしている。

定評あるリードと昨季盗塁阻止率リーグ1位の強肩が武器の捕手だが、今オフは「打撃力向上」の目標を持ち、大阪・舞洲の球団施設で打ち込んできた。

選手会長も務める扇の要は、昨季138試合に出場し、打率1割7分8厘、1本塁打、21打点。周囲からは「もう少し若月が打てれば…」という声も耳に入った。「大幅に(打撃成績を)上げないといけない。大幅アップ。全部、全部です」。発奮しないはずがなかった。

昨季は1本塁打に終わったが、6月2日の対外試合再開後は、すでに2本のアーチを描いた。3日ソフトバンク戦(京セラドーム大阪)では、2回に右翼席へ先制ソロを放った。「しっかりと芯で捉えることができた。練習から取り組んできたことを、試合の打席で出すことができてよかった」。体の軸をぶらさず、右腕でボールをグイッと押し込んだ一打。好感触が残った。

新型コロナウイルスの影響で、シーズン開幕日は6月19日まで延期。3月8日の日本ハム戦で右太もも裏に張りを感じて途中交代し「右ハムストリングスの筋膜炎」と診断されたが、現在の状態は良好で「焦らずに治療ができた。今は強くバットが振れています」と笑顔でうなずく。

改良した打撃フォームにも手応えがある。「去年は低めに手を出してしまうことが多く、なるべく振らないようにと考えて今のフォームになりました」。右足に体重をズシッと乗せ、ボールを呼び込んだポイントで、打球をはじき返す。精神的な支えもあった。「後藤(打撃)コーチが(練習から)見てくれて『いくら三振してもいいから当てにいくな』と。気持ちの面も大きいかなと思います」。力強い打球を放つ心得は、技術面だけでなく、思い切りの良さにもあった。

西村監督も進化した打撃を褒めている。「すごく振れている。状態はすごくいい。(試合の)最後まで出てもらわないといけない捕手。去年は代打を送らなければいけなかったけど、率が上がれば(途中で)代わることも少なくなる」。正捕手として、最終回までホームを守り続ける。

チームは昨季最下位に沈んだ。「今年は試合数が減って、1試合1試合がより一層大事になってくる。スタートダッシュを決める上でも、開幕戦が大事。やっぱり、勝ちたいです」。開幕白星は10年を最後に遠ざかっている。開幕カードも11年から9年連続で勝ち越せていない。「チームとしてAクラス、もちろん優勝を目指してやっていくだけです」。その言葉には、自然と力がこもった。【オリックス担当=真柴健】

3日ソフトバンク戦、先制ソロ本塁打を放つ若月
3日ソフトバンク戦、先制ソロ本塁打を放つ若月