忘れかけていた言葉がある。「育成&勝利」。オリックス中嶋聡監督が20年8月に監督代行に就任した際に語った言葉だ。

監督代行を務めた指揮官は、21年が監督就任1年目。選手個々の能力を見極め、現有戦力に新顔をマッチング。その結果は25年ぶりのリーグ制覇だった。

立役者は投打の2本柱である、エース山本と主軸の吉田正で間違いない。ただ、そこに新人王左腕の宮城、長い下積み人生からブレークを果たした昨季本塁打王のラオウ杉本、20歳遊撃手の紅林ら、新戦力が頭角を現した。

22年オリックスはどうか-。開幕からチームはコロナ禍に見舞われ、思うように戦力がそろわない。野手の大半がコロナ離脱を経験している。苦しむ中、指揮官が「全員が戦力」と言うように、今季の新顔もたくましい。ラオウ杉本が離脱する穴は、高卒2年目の来田と高卒1年目の池田で補った。U20の2選手だが、魅力あるスイングで躍動。将来が楽しみな存在に、間違いない。

年が若い選手を指導するだけが「育成」ではない。中堅選手も存在感を発揮する。31歳の西野は4日ソフトバンク戦で4番を任された。しぶとい打撃が持ち味で、得点力不足に悩むチームを後押しする。現在は2軍で調整中だが、29歳の後藤も開幕スタメンを勝ち取った。

投手では26歳の山岡が右肘手術を乗り越え、先発スタッフとして帰ってきたのが大きい。30歳の近藤もトミー・ジョン手術から復活。明るい話題は、たくさんある。

32試合経過して15勝17敗の借金2で4位。現状に満足してはならないが、コロナ禍で完全にはそろわない戦力の中で奮闘している。4日にはエース山本をリフレッシュのために出場選手登録抹消。切羽詰まった首脳陣であれば、できない決断だった。

ファームには山下、椋木の20、21年ドラフト1位投手が着実に成長している。「全員で勝つ」。王者ながら挑戦者であるオリックスが、魅力を発信し続ける。【オリックス担当 真柴健】