今季、ロッテ福浦和也(43)がイースタン・リーグ公式戦に出たのは7月9日時点で9試合。共通点がある。習志野秋津、柏の葉、船橋に市原-。千葉県開催の主催試合と、その直前のゲームということだ。

「千葉の地方球場は出るつもりでいるよ。近づいてきたら打席に立つ。いきなりでも打てないことはないけど、失礼じゃん。ある程度見せられるように、振れる状態にしないとね」

習志野市育ちの福浦にとって、これは引退前の恩返し行脚。基本は若手に出場機会を与えるべく、コーチ業に比重を置く。自分の出番は「たまに、くらいでちょうどいい」。その「たま」に意義を持たせた。

5月、イースタンのヤクルト戦の試合前に、地元・習志野でピッチセレモニーを行ったロッテ福浦
5月、イースタンのヤクルト戦の試合前に、地元・習志野でピッチセレモニーを行ったロッテ福浦

特に力を入れたのが5月11日の秋津だった。習志野高時代、投手として投げた思い出の地。“試運転”は同7日の日本ハム戦(浦和)。ここで右中間二塁打を放つと、本番はヤクルト館山から中前打で決勝点を挙げた。夜、駆けつけた高校野球部の同期たちと卓を囲んだ。「いつの間にか俺の2000安打のお祝いになっちゃって」。うたげは大いに盛り上がった。

いいところで打つ。いずれも代打で9打数3安打。昨季悩まされた首痛も、ポイントで振る分には問題ない。「打者福浦」。じかに見たい方、朗報です。

「8月4日は(2軍)最後のマリンナイターだから。出るよ」

9月には引退セレモニーも待つが、チーム順位次第で出場は未定。2000安打以来のZOZOマリンの打席。うぐいす嬢・谷保さんの「代打、ふくーらー」。盛り上がるだろうなぁ。

長く現役でいたから、18連敗の苦しみも、2000安打の喜びも味わった。ヤクルトの連敗が16で止まった時は「やっぱそう簡単に18は超えられないんだなあ。なかなか抜かせないね」と苦笑いしていた。

早朝から終日外で過ごす2軍コーチ業は、体力を消耗する。一方で1軍でプレーする重圧や高揚感は、言葉にできないものがある。「やっぱりモチベーションとか精神的には、1軍で活躍するっていい。お客さんに見られてさ。だからこいつらに、頑張れよって言ってる。そういうのを1人でも、2人でもね。味わえるように」。後輩たちに、見てほしい景色がある。

浦和球場は入団した25年前の面影をそのまま残す。1軍に初昇格した4年目まで、がむしゃらに汗を流した。「体力なさ過ぎて、本当に練習がきつかった。若い時しんどいのは当たり前なんだけどね」。

駐車場で話していると、帰る選手たちが次々とあいさつに来た。その中に、ある「しんどい」に打ち勝った投手もいた。

「公表して、結構いいことがいっぱいあった気がします」。2年目左腕の永野将司(26)だった。(敬称略=つづく)【鎌田良美】