<センバツ高校野球:中京大中京2-0専大松戸>◇25日◇1回戦
プロ野球に40年以上携わってきた田村藤夫氏(日刊スポーツ評論家)は、1回戦最後の試合で、心をつかまれる場面を目の当たりにした。それは、見応えのある投手戦を決着させた1つのプレーだった。
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ここまで注目の2年生を軸に見てきたが、1回戦最後の試合、中京大中京-専大松戸戦には明と暗をくっきりと分けるプレーが印象に残った。7回裏の2死二塁。中京大中京の左打者櫛田の打球は左翼前への低いライナー。前進守備の左翼手吉岡道泰外野手(3年)はダイビングキャッチを試みたが、捕れずに打球は外野を転々とし、ランニングホームランとなった。
私は何とも言えない気持ちになった。0-0の7回裏。外野は1点をやらないための前進守備。そこにライナーが飛び、吉岡は飛び込んだ。好投する深沢を助けてやろうという、必死さゆえのダイビングだったと思う。捕っていれば大ファインプレー、失敗すれば、いや失敗など毛頭も考えず、吉岡は無我夢中で飛び込んだのだろう。その気持ちを想像すると、吉岡の選択は責められない。
プロではあまり見ないプレーだ。プロは無理をしない。サヨナラ機の2死三塁なら、ダイビングもあるかもしれないが、2死二塁ならば飛び込まずに捕球してバックホームを選択する。首脳陣からの指示を含め、多くの経験と確認作業があるからで、高校野球がそれに対してレベルが低いという意味ではない。
高校野球が、見るものの心をつかむのは、この吉岡のすべてをかけて飛び込んだ全力プレーにあると感じる。試合後、号泣する吉岡の姿が映った。「かわいそうだな」と感じずにはいられない。深沢も30キロ差の緩急をつけた申し分ないピッチングをしていた。専大松戸にとって、殊に吉岡にとっては忘れることができないプレーとなった。私はその中にこそ、プロでは見られない高校野球特有の一瞬に懸けるはかなさを見た思いがした。
この試合を演出したのは専大松戸の深沢鳳介投手(3年)と中京大中京の畔柳亨丞投手(3年)の投手戦だった。力でぐいぐい押していく畔柳と、緩急を使い打者のタイミングをずらす深沢は、正反対の攻め方で抑える見応えある内容だった。
畔柳は市和歌山の小園と双璧の本格派投手と言える。言ってみればストレートは、ドーンと来る剛腕タイプ。小園の方がスライダーのキレは上と見たが、ストレートの軌道という点ではストレートで6個の空振り三振を奪った畔柳の球質が光る。チェンジアップもよく制球されており、小園とともに2回戦以降が非常に楽しみだ。
◆田村藤夫(たむら・ふじお)1959年(昭34)10月24日生まれ、千葉県習志野市出身。関東第一から77年ドラフト6位で日本ハム入団。ロッテ-ダイエーを経て98年引退。引退後も99年から21年間、ソフトバンク、日本ハム、中日などのバッテリーコーチなど務めプロ野球界に携わった。




