センター前へ抜けるか-。と思われた打球をダイビングキャッチ。ここまではよく目にするプレーだが、目を見張ったのは直後の判断である。二塁ベースカバーにはいった庄司に、そのままの体制で素早くトス。ボールは一塁にも転送されて、見事ダブルプレーを成立させた。ショートを守っていたのは今季が2年目。高校は常葉学園菊川(静岡)からドラフト5位で広島に入団した、桑原樹内野手(19)である。
成長の証しを目の前で、直接見せてくれた。今後が大いに楽しみな選手だが、高校時代には甲子園球場で2本のホームランを打った素質の持ち主。そういえば昨年も将来有望な新人としてこのコーナーで取りあげた。当時の高監督(現1軍ヘッドコーチ)は「いいセンスの持ち主。強化選手の1人ですが先が楽しみです。細いわりには体もしっかりしていますから」の来たいを寄せていたが、今シーズン後を引き継いだ水本監督も「順調に成長していますね。これからも故障がない限りどんどん起用していきますが、一段階上のレベルまできています」と成長を認めているし、将来を楽しみにしている。あとは桑原本人の野球に取り組む姿勢だ。
練習あるのみ。我々の時代からよく言われてきた「練習は試合のつもりで、試合は練習のつもりで」と-。そして「とにかく練習で目立て。練習で泣いて、練習で笑え」と-。広島はよく練習をするチームだ。そういう意味では若い選手は恵まれた環境にある。そんな厳しさの中でひとまわり大きくなった桑原の体を見て、ひのき舞台で活躍できる要素を持った選手だと思った。この世界にはいって1年間生活して自然に体が大きくなった選手はまず1軍で活躍している。
ただ、現時点の力では即1軍の域にまでは達していないが、気持ちの上でも強いものを持ち合わせている。鳴尾浜球場でのゲーム後である。いろいろ話を聞いてみようとロッカーに行ってみるとマッサージ台で治療を受けているではないか。他の選手はグラウンドでバットスイングをしているというのにビックリした。そういえば盗塁を阻止した際、相手ランナーと激突して右膝を打撲した。その場で、いったん治療を受けて試合を再開したほどのケガだった。悪いタイミングで取材に行ってしまった。一瞬引き返そうと思ったが時間がない。申し訳なく思ったが、その鍛え抜かれたガッシリした足を目の当たりにして、さらに期待を深めた。
「ケガですか…。ハイ、大丈夫です。調子はまあまあです。この世界で1年が経過しましたが、練習がいかに大事なものかよくわかりました。もちろん、まだ力の差は感じていますし、一応のレベルにまで力をつけるのも大変ですが、いまはバットを強く振れるようになることをテーマに、毎日バットを振っています。今年はこれまで毎試合起用していただいていますので、気持ちの上で張りがありますし、やり甲斐もあります。まだやることはたくさんあります。技術面だけでなく、長いシーズンコンスタントに力を発揮できる体力も必要です。まだ、即1軍などとは考えていませんが、あのグラウンドに立ってみたいです」
目下、ウエスタン・リーグ公式戦全18試合に出場。64打数、17安打で打率は2割6分5厘。ズバ抜けた成績はないが開幕戦でプロ入り初ホーマーを放った。ヒットゼロの試合は4試合だけ。コンスタントに数字を残せるバッターと見ていいだろう。水本監督はどう見ているか。「若手をどんどん起用して、若い選手を育成していく方針です。うちの場合1軍の選手も若いですから、その後釜ということを考えても“若手の育成”ですね。桑原なんかも成長していますし、現在は開幕から全試合起用しています。やっぱり、いろいろ勉強できるのはゲームですから」。2軍監督、根気のいる立場だが、反面、若手が成長していくのを見届ける楽しみもある。
監督は若手育成の方針だ。桑原のレギュラー獲りは-。技術面で順調に成長。昨年と比べワンランク上の力を身につけている。体も一回り大きくなった。さらに、ケガをしても全く痛いそぶりを見せずにゲームに出場している。ハートは強い。ケガにも強い証しだ。レギュラーを獲る要素を持った選手だ。



