オリックス戦に先発も2発を浴び5回5失点の阪神才木浩人(2019年4月9日撮影)
オリックス戦に先発も2発を浴び5回5失点の阪神才木浩人(2019年4月9日撮影)

投手の命であるストレートのMAXは150キロ超。期待通り2年目の昨シーズンは1軍で6勝をマークして頭角を現した。阪神才木浩人投手、須磨翔風からドラフト3位で入団して3年目。今季は開幕ローテーション入りが約束されていたはずの投手だったが、オープン戦の時期が最悪の調子。結果を出すことができずファームでのスタートとなった。若い投手にはありがちなことだが、なかなか調子が上がってこない。9日のオリックス戦、鳴尾浜球場のマウンドに才木が上がっていた。

フォームは相変わらずダイナミックだ。腕は強く振れている。いきなり149キロ。球威が戻ってきた。初回は難なく3人で片付けた。2回の先頭打者ロメロを見逃しの三振に仕留めた外角いっぱいのストレートは手も足も出ない1球。実に圧巻だった。「これは……」楽しみにしていた途端だ。突如として制球が乱れだした。目を疑った。なんと1死から3連続の四球。打順が下位に回り事なきは得たものの、この四球が後のピッチングに影響したのは間違いない。内容は5回101球、被安打5、奪三振8、与四球5、失点5。中身をどう見るか。

球威は戻ってきたが、2発を浴びての5失点は本人の「四球を出したらいかん」という意識の過剰が手元を狂わせたものと推測する。3回、ロメロのホームランは2死を取った後で、バッターは新人(中川圭太)である。普通に投げれば歩かせるなどあり得ないはずなのに四球を与え「しまった」の気持ちが、才木の言う「ロメロに打たれたのはフォークです。同じフォークが良いコースに決まった後、続けて投げた球でしたが甘かったですね。あとの1発も四球を出した後でした。低めのストレートでしたが。そういえばあのバッター(杉本裕太郎)はローボールヒッターでした。先発投手として申し訳ない内容でした」になったに違いない。

まだ、本来の姿とは言えない。足踏みをしている。1軍への推薦までには至っていないが、今回の試合の、あの力のあるストレートを見る限り、才木の表情が緩んできたのが分かる。5回8三振は球威が復活した証し。桧舞台の雰囲気、盛り上がりを体験しているだけにマウンドでの躍動が頭をかすめるのだろう。才木は「調子は良かった。今年に入って自分では一番良かったと思っています。毎日、いろいろなテーマを持って練習しています」という。オープン戦の頃は140キロ台前半の球速しか出なかったストレートが、今回は平均して140キロ台の後半が出ていた。大事なフォームのバランス確認、変化球のコントロールなどなど、入念なピッチング練習が上昇気流につながっているようだ。

現在、評価するのは非常に難しい状態だが、平田勝男2軍監督が「今回は評価していますよ。キャッチャーとの呼吸が今ひとつで四球を出したりしましたが、ストレートに本来の力が戻って来ましたからね。今シーズン一番の出来だったと思いますよ」というほどで先は明るいと見て期待しよう。

素材は申し分ない。投手陣の柱になれる存在だ。あとは努力あるのみ。投球術の向上は球種や制球力の問題だけにあらず、下半身の強化も大事。足腰を鍛えることによって、体のしなった、粘っこいフォームが身につく。当然のように球は生きてくる。フォームが安定してリリースポイントの狂いが少なくなる。まだ若い。21歳だ。「入団した年より6キロ増えましたから」体が大きくなったことを強調した。中日松坂大輔投手が才能を認めている。計り知れない可能性を秘めている。楽しみになってきた。早期の復活が見えてきた。【本間勝】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「鳴尾浜通信」)

ウエスタン・リーグのオリックス戦に先発した阪神才木浩人(2019年4月9日撮影)
ウエスタン・リーグのオリックス戦に先発した阪神才木浩人(2019年4月9日撮影)