高原のねごと

それでも藤浪に期待、もう1人のシンタロウ忘れるな

誰も言わない、書かないのであえて書きます。「それでも藤浪晋太郎に期待している」と。

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新型コロナウイルス(以降、コロナ)の流行、そして「緊急事態宣言」。多くの人が行動を自粛しています。誰もが何とも言えないストレスを感じているでしょう。

そんな中、球界で妙に目立っているのが藤浪を巡る騒動です。日刊スポーツでも大きく報道しましたし、知らない方はいないでしょうが先月14日に複数が集まる食事の席に出掛けていき、そこでプロ野球選手第1号となるコロナ罹患(りかん)者になったというものです。それを受け、批判が集まっています。

不用意だったのは間違いない。藤浪自身も言っているように猛省が必要です。球団も指導を徹底できなかったという面では一定の責任はあるかもしれません。

独身の健康な若者に外出するな、1人で家にいろと責めるのは、なかなか難しい。知った顔がほとんどの場所となれば油断してしまったのかもしれません。緊急事態宣言の出ている現在より約1カ月前のことでもあります。それでも不用意なのは間違いない。ダメなものはダメです。

しかし思うのは罹患(りかん)したことを責める風潮はよくないのではということです。そもそも、いつ、どこで誰がかかるか分からない。不要不急の外出を避けて生活していてもかかるかもしれない。「魔の手」がどこにあるか、誰にも分からないのです。

もちろん、だからこそ普段の生活に気をつけなければならないのですが。

特別に擁護するつもりはありませんが藤浪は真面目な部分の多い若者です。世間では知らぬもののないスターですが取材にはしっかり応じますし、年長者には敬語を忘れません。今回の騒動でも各方面におわびの電話を入れていたようです。

制球難に苦しむこの数年ですが野球に必死で取り組んでおり、周囲で見ている側からすれば「もっと気楽に投げたらええんちゃうの」と言いたいほど。そういう意見もこれまでは多かったと思います。

個人的に藤浪への期待を持ち続けるのは、こんなことがあったからです。昨季の終盤、藤浪と少しだけ雑談したときのこと。

昨年限りで引退、退団した横田慎太郎氏の話でした。高校を出てプロ入り4年目の17年、さあ、これからというときに脳腫瘍を発症。病気こそ克服しましたが、モノがブレてみえるという症状が出て、野球を断念したのは周知の通りです。

「気の毒で仕方がない」。そんな話をすると藤浪はこう言いました。

「本当にそうですよね。シンタロウのことを思えば、練習がきついとか結果がどうだとか、そういうことは言えない。野球ができるだけでありがたいです」

そう聞いたとき「ほお」と思いました。藤浪は次の日曜、12日で26歳を迎えます。まだまだ若い。その年齢でそういう発想を持てる人間は、そう多くはないとも思います。

その言葉を聞いて「期待しよう」と思ったのです。あれから半年が過ぎ、世の中は予想をしなかった状況になり、藤浪にも逆風が吹いています。

これをはね返すのは大変だと思います。しかし、だからこそやらねばならない。もう1人のシンタロウのためにも。ここでつぶれてもらっては困る。そう思うのです。


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取材生活30年を超える古だぬき記者。吉本興業から宝塚歌劇団、あるいはヤバい人たちの取材から始まり、プロ野球ではイチロー日本一(96年)星野阪神V(03年)緒方広島連覇(17年)などの瞬間に立ち会った。日刊スポーツ大阪本社編集委員。

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