若い頃から口にしていた。「オレ、風邪をひいたこと、ないんですわ。ホンマ、自分でも強い体やなと思う」。阪神監督の岡田彰布である。付き合いは45年になるが、実際、岡田がダウンしたという記憶は、自分にはない。
食事を共にしたことは何百回とあるが、野菜はほとんど口にしない。「食べた方がいいで」と言うと、必ずこう返ってきた。「別にいいやんか。無理して嫌いなもの、食べることはない」。肉、魚は食べても、野菜は食べない。それでも体は本当に丈夫でタフだった。
「ホンマ、しんどいわ」。岡田がそう漏らしたのは10月8日の練習日だった。CSに備えての調整日、岡田はノックバットを手にしながら、椅子に座ったままだった。聞けば睡眠不足で、2日間はほとんど眠れていなかったとか。今季限りの退任が正式に決まり、張り詰めていた糸が切れたのか? 「どうやろな」と言うだけで、また黙った。こんな岡田を見るのは初めてだった。
「これから病院に行く」。数日前、健康診断を受けていたが、練習後は病院で点滴。そして9日の練習を休んだ。10日は休日だったから、これで2日、休養にあてられる。これでよかった。
岡田が姿を見せない。こういうことは自分の記憶にはない。現役時代、何度も故障で離脱したことはあっても、それ以外の体調不良での休みは初めてだと思う。「ゆっくり休んでください」と告げると、やっとして「アアッ」と答え別れた。
球団から風邪によるものとの発表があった。電話連絡では元気を取り戻しているとのこと。まずは安心した。11日には最終調整に現れ、いよいよ12日、CS初戦。岡田の監督最後の戦いがスタートする。
以前にも書いたが「1日でも長く野球がしたい」と言ったのが、岡田なりのサインだった。この言葉、すでに球団との話で退任が決まったあとに残している。まだ去就に関して報道されていない段階だった。だから「1日でも長く…」はとても気になるコメントだった。岡田はこれまで、そんなことを口にする監督ではなかった。CSにもそれほどむき出しの気持ちを出してこなかった。
そこが気になる…と自分なりに引っかかったから文字にしたが、その直後、退任が明らかになった。まさに、なるほど…だった。
願うのは完全燃焼。培ってきた監督力を出し切り、選手を鼓舞し、勝ちにこだわってほしい。DeNAを破り、その次に待つ巨人を倒し、日本シリーズへ。日本一へは最大16試合(ファーストステージ=3、ファイナルステージ=6、日本シリーズ=7。引き分けを除く)。66歳、球界最年長監督の采配は見納めになる。
2日間の休養で岡田は何を考えたのだろうか。メラメラしているに違いない。体調を回復させ、あの姿をベンチの中で見せてくれ。【内匠宏幸】(敬称略)(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「岡田の野球よ」)




