<ウエスタンリーグ:中日5-7広島>◇13日◇ナゴヤ球場

久しぶりに根尾昂投手(23=大阪桐蔭)のピッチングをナゴヤ球場で見ることができた。昨年6月に外野手から投手へ登録変更。2月キャンプでは大乱調に陥り、紆余(うよ)曲折を経て投手としてトレーニングに励む。根尾の現在地はどこにあるのか、しっかり観察した。

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根尾のピッチングを球場で見るのは3月下旬のオープン戦以来だ。このタイミングでナゴヤ球場に足を運んだのは、もしかすると根尾のピッチングが見られるかもしれないと思ったからで、幸運なことにチャンスが巡ってきた。

根尾は2番手として3回から登板。最初の3イニングは同期の石橋康太捕手(関東第一)とのバッテリーだった。8回途中まで5回1/3を投げ4安打、4奪三振、4四球、失点5(自責5)。91球のピッチングで防御率3・38。

最速は151キロ。変化球はスライダー、カットボール、フォークだった。スライダーとカットボールの軌道が私には判別しづらく、後日、本人に確認するしかない。私が見た中では小園へ投じた膝元へ低く制球されたスライダーが素晴らしく、この試合一番のボールだった。

真っすぐに力はあった。私が注視してきたベース板での強さも出ていた。だが、田村にその真っすぐを簡単に左前に打たれた。150キロの真っすぐで、よく体重も乗っており、その割には簡単に打たれたのが意外だった。

球筋が見やすいのか、タイミングが合わせやすいのか。こうしたところがここからの課題になる。腕を振って、リリースポイントも良ければ、回転数も出るはず。空振り、悪くてもファウルを奪える真っすぐへ、球質を上げてほしい。

ベース板の中で、ボールが高めに抜けたり、たたきつけることで低かったりと、ばらつきはあった。プロのレベルから言えば、上下にばらつくのは、リリースポイントが安定していない可能性があり、そのリリースポイントの不安定さはフォームのバランスに起因するのかもしれない。

セットポジションになった時、根尾は明らかに投げづらそうだった。足をゆっくり上げるのが根尾のリズムだが、セットになると不安定さが感じられた。こうした細部も含めて安定感を出さないと、その日の調子次第というピッチングになる。

四球が絡むと失点するというのも、根尾に限ったことではないが、傾向としては良くない。四球を出さないに越したことはないが、それでも1試合で1つや2つは与えてしまうもの。

ストレートの四球は1個、残り3個はフルカウントからの四球。歩かせてからでも、タイムリーを許さない粘りは不可欠。四球を出さないイニングは3者凡退に抑えても、四球が失点に直結するピッチングでは試合は作れない。

ここ3試合の登板を見ていると、少なくとも長いイニングを投げることに取り組んでいると感じる。首脳陣も先発を念頭に置いているのだろう。となれば、5回1/3で5失点(自責5)は、試合を作れていない。やはり3点までに抑えないと。

そのためには、イニングによってある程度の強弱をつける工夫も必要になる。まず、フォームのバランスを安定させ、変化球でしっかりカウントを取れるようにすること。そして状況に応じて真っすぐで空振り、ファウルが取れるように球質を磨くこと。

根尾には分かりきったことだと思うが、あらためて基本を指摘しておきたい。そして、こういう評論をしていることに、実は多少の感慨がある。

なぜなら、くどいようだが2月沖縄・読谷での乱調ぶりがまだ鮮明に記憶に残るからだ。指にひっかけたスライダーがバッターボックスから外れるほど暴れていた。もしくは内角のボールが抜けて死球という場面もあった。

これはかなり修正するのに時間を要するなと、直感的に思ったのだが、そこを出発点として考えると、この4カ月でここまで戻ってきた。その練習量を考えると、メンタル、体力両面でのタフネスぶりは出色といわざるを得ない。

日本ハム姫野投手からも話を聞いて、あらためて野手から投手に転向するチャレンジの困難な部分、一瞬にしてほつれた糸口が大きな穴になってしまう繊細さを、考えさせられた。

ゆえに、根尾がトライしている道は、いいときは希望にあふれるが、いったん暗転すると、どこに出口があるのか分からない複雑なトンネルが待ち構えるリスクが伴う。

恐れてばかりはいられない。やるしかない。それは姫野投手も同じ心境であったと感じる。根尾も結果を出すしかないという強い決意で、5年目の夏を迎えようとしている。

試合後、グラウンドを見ていると根尾が出てきてマウンドに立ち、何度もフォームを確認していた。

私はこういう根尾が、いつしか成功をつかんでほしいと心から思う。プロだから当たり前だという感想をお持ちの方もいるかもしれない。確かに、そう思われるのがプロ野球の世界だ。

しかし、私が知る限り、根尾の突き詰めてやり抜く姿勢は群を抜く。一切の妥協なく、日々の練習を100%の全力でやり抜くそのスタンスは、あらためて胸に迫るものがある。

まだ過程だ。ここから根尾がどこまで成長できるか。フォームを乱す可能性も伴う中、先発として1軍に昇格できるようになるか。これからも注目したい。(日刊スポーツ評論家)

4月18日、浅尾拓也2軍投手コーチと言葉を交わす根尾昂
4月18日、浅尾拓也2軍投手コーチと言葉を交わす根尾昂