グラウンドをランニングする鵡川の選手たち(撮影・永野高輔)
グラウンドをランニングする鵡川の選手たち(撮影・永野高輔)

北海道胆振東部地震で甚大な被害を受けた、むかわ町の鵡川高野球部が12日、1週間ぶりに練習を再開した。

同町は6日の地震で震度6強を記録し、選手寮で生活していた3年生を含む全部員34人が一時、実家に帰省。この日の学校再開に合わせ全員が11日夜までに寮へ戻り、グラウンド練習には1、2年生の全24選手が参加した。

02年センバツにエースとして出場した鬼海将一監督(34)は、選手寮のベッドで就寝中に被災した。足側からガラス戸付きの棚が倒れてきたが、辛うじて起き上がり背中で押さえたため、下敷きにならずに済んだ。その後は選手を寮のホールに集めて点呼。明るくなってから町の様子を見に行くと、グラウンド脇の高さ約20メートル、横100メートルの防球ネットが倒壊し道路をふさいでいた。「状況が分かってから、あらためて命があっただけでも良かったと感じた。最初は野球のことはまったく頭から抜けていた。今日、ユニホームを着るとき、今まで経験したことのない重みを感じました」と話した。

09年以来4度目のセンバツ切符を目指し、14日に秋季北海道大会室蘭地区予選の初戦に臨む。実家の札幌市から寮に戻った内海陸主将(2年)は「本当は町の支援とかを手伝わなければならないのに野球をやらせてもらえる。応援してもらっている町の方に勝って恩返しがしたい」と話した。実家が北広島市の副主将、成田壮志投手(2年)は「震災後は2日しか練習できないが、他のチームも状況は大きく変わらない。地震前までに練習してきたことをしっかり試合で出せるようにしたい」と気を引き締めた。

鵡川は校内の安全が確認され、12日に学校再開できたが、鵡川と同じむかわ町にある穂別や、グラウンドが自衛隊の車両基地になっている厚真、震度6強だった安平町にある追分など、近隣の4つの高校は、18日の学校再開を目指しているが、明確なめどは立っていない。

【永野高輔】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)

北海道胆振東部地震の直後、タンスとテレビが倒れた鵡川選手寮の鬼海監督の部屋。同監督は右奥野ベッドで寝ていた(鵡川高・鬼海将一監督提供)
北海道胆振東部地震の直後、タンスとテレビが倒れた鵡川選手寮の鬼海監督の部屋。同監督は右奥野ベッドで寝ていた(鵡川高・鬼海将一監督提供)
北海道胆振東部地震の直後、調理具が入り乱れるように動いてしまった鵡川選手寮の厨房(鵡川高・鬼海将一監督提供)
北海道胆振東部地震の直後、調理具が入り乱れるように動いてしまった鵡川選手寮の厨房(鵡川高・鬼海将一監督提供)