雨のせいで阪神にとってはこれが甲子園で唯一となった無観客試合、開幕3連敗を喫した巨人相手に接戦を取った。6回を1安打6四球のガルシアは“怪投”だったがボーアの甲子園初本塁打にはしびれた。4番に入った大山悠輔も積極的に振っていたし、藤川球児もなんとかセーブをマークした。

ついでに言わせてもらえば巨人の指揮官・原辰徳に甲子園で「記念星」を献上することも阻止した。阪神が負けていれば原は通算1035勝となり、巨人の終身名誉監督・長嶋茂雄を抜いて球団歴代単独2位になるところだった。なんだかんだで今季ここまで、最高級の試合だったと言える。

10日からは段階的とはいえ、観客が入る。ようやくシーズンが始まるような気分かもしれない。さあ、これからや! と浮かれたいところだが現実は厳しい。最下位・阪神はこれで5勝10敗。この日、下した首位・巨人はそれでも10勝5敗。5ゲーム差だ。

ゲーム差、順位の話で思い浮かぶのは闘将・星野仙一によく聞かされたセリフだ。こんな感じだった。

「130試合とか140何試合とか。それだけあるとか思っててもやな。結局、100試合ぐらいで流れは決まっとるんや」

確かに過去に皆無だったわけではないが、最終戦、あるいは残り数試合で優勝が決まるような状況になるシーズンはほとんどない。ほとんどは残り20~30試合ぐらいを残し、優勝の行方は決まるものだ。

それを考え合わせれば、ちょっと恐ろしいことがこの日、発表された。7、8日に雨天中止となった巨人戦は9月7日と10月5日の予備日に組み込まれた。これで阪神は9月以降に13連戦を2度も行うことが決まったのだ。その途中に9連戦もあり、9月1日からの41日間で実に38試合の過密スケジュールだという。

コロナ禍により120試合制の特別ルールで行われている今年。セ・リーグはクライマックス・シリーズも開催されない。言うまでもなく秋に興味をつなぐには、優勝しなければならない。言い方を変えれば,

今季はいわゆる“消化試合”が増える可能性が高いのだ。

阪神以外の5球団が早々と優勝を決めた場合はもちろん、大きく引き離されて優勝の可能性がほとんどなくなった後で、長い連戦を戦うのは苦痛だろう。終盤の過密日程を熱い戦いの日々にするためにも、接戦勝利を浮上のきっかけにしたい。(敬称略)

【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)