「自力」と「他力」は絡み合っているという話を前日に書いた。くどいがその続きから始めたい。阪神は1点差勝利を収め、自力優勝の可能性を復活させた。試合前、この日にそうなる可能性は1つだけ。つまり阪神○、セ首位のヤクルト●の場合だけだった。阪神が勝ってもヤクルトが負けていなければ“復活”はなかった。
この日は理想である「セ独り勝ち」に。阪神がどれだけ頑張っても他球場の結果に影響を及ぼすことはできない。まさに「他力」だが頑張っていればおいしいことも起こるという典型的な日になった。
もちろん「自力」の部分はあった。というか、それがなければ何も始まらない。なんとか連敗を止める。そのためベンチは必死で頭をひねり、オーダーを変えてきた。この日最大のそれは1番に島田海吏を起用し、近本光司を3番に回すことだったろうか。
この策は4月12日中日戦で1度、試しているが、その日は島田は4打数無安打、近本は1安打。試合も難敵・大野雄大から佐藤輝明が3号ソロを放ち、勝てるかと思えたものの湯浅京己が8回に逆転を許す痛い敗戦に。結局「1番島田」はそれで封印されていた。
この日は成功したが指揮官・矢野燿大は「結果が出たからいいけど出えへんかったらまた違うわけで」と本音を漏らした。確かにそうだが結果はともかく島田、中野拓夢、そして近本と並ぶとスピード感は出る。4得点の3回、「球宴中間発表御礼」の佐藤輝が放った適時打、大山悠輔の3ランは大きかったが1回から俊足3人で攻めたヒットエンドランや盗塁は西武にイヤな感じを与えた。
いつも書くが指揮官・矢野燿大の言う「オレたちの野球」はもともと「超積極的野球」だ。足を絡めていかないと勝利には遠い。この日のような展開を続けていくことは白星を積み上げるためには必要だろう。
もちろん反省点もある。3回までに5点を先制した阪神打線だが5回以降は無安打無得点。これは投手陣にプレッシャーを与える。安定した投手陣を背景に「2点取れば勝てる」と思っていても、この日は4失点。これこそ打線と投手陣の「自力」と「他力」の話になるのかもしれないが。いずれにせよ「投」に「打」、そこに「走」を懸命に連携させ、交流戦から借金を返済していきたい6月である。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)