「ファン感謝デー」はある意味、面白い。FAやポスティング制などで移籍する可能性のある選手が参加するかどうか。移籍先が未定なのに顔を見せない場合は元の球団とうまくいっていないのかな、などと想像したりする。

26日、3年ぶりに甲子園で行われた阪神の感謝祭。大リーグ挑戦を目指す藤浪晋太郎が参加した。秋季キャンプにはいなかったがファンへの“お別れ”、ケジメの部分もあるのか。

司会陣から「阪神に戻ってくる?」と聞かれ「最後はタイガースで終われたらと思っています」などという感じの発言をした。虎党へのリップサービスかもしれない。それでも、そんな配慮というか言動は大人として好ましいと思う。

大人と言えば少々驚かされたのが新指揮官・岡田彰布のあいさつだ。最初こそ「えー」という出だしだったが淡々とゆったりと間を取って言いたいこと、言うべきことを話した。さらにキャッチフレーズのような「アレ(優勝)」を織り交ぜ、スタンドを沸かせた。「おーん」とか「ねえ」という例の独特の言葉はなくメモも見ずに堂々とした話しぶりだった。

「岡田さん、しっかり話されていますね。『アレ』もうまいこと使ってはったし」。記者席から見ていた球団幹部に話しかけると「そうなんですよ。本来、頭のいい繊細な方ですからね。きっちり用意されてきたんでしょう」とうなずき、同時に「でも本当にアレですよね」と力を込めた。

藤浪のことを書いたが岩崎優も岩貞祐太も、西勇輝も参加。いずれもFA権を取得したメンバーだ。阪神は全員を残留させている。それなりの金額を使ったのである。それでも数年後には大山悠輔、近本光司、青柳晃洋という面々がFAになる可能性は高い。

「もちろん、みんな残ってもらうつもりですけど、とにかくこのメンバーがいる間に優勝しないとダメでしょう。それしかないです」。幹部は続ける。実際、チームの若返りに成功した昨季、今季は優勝へ大きなチャンスだった。

それを逃した今、もう1度、頂点へ挑戦するには現状考えられるベストメンバーを経験豊かな指揮官に委ねるしかない。そう考えることは自然ではある。監督就任後、初めてタテジマ姿で甲子園に登場した岡田は「興奮している」と言った。その双肩にかかる期待はやはり大きい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

ファンにあいさつをする阪神岡田監督
ファンにあいさつをする阪神岡田監督
ファンにあいさつをする阪神岡田監督(撮影・石井愛子)
ファンにあいさつをする阪神岡田監督(撮影・石井愛子)