快勝だ。1回から大山悠輔の2ランが出るなどヤクルト相手に連勝。球場を引き揚げる顔はみんな手応えを感じている様子だ。そんな中、くちびるをかみしめていた若者がいる。前川右京だ。序盤に6得点、9番投手の西勇輝まで2安打を放つ中、前川のバットから快音は聞かれなかった。
「今日だけじゃないんで。昨日もボクだけヒットがなかったんでね。(状態が)悪いのは自分でもよく分かっています。このままズルズルいくと終わってしまうんで」。淡々と、しかし悔しそうに「終わってしまう」と強い言葉を選びながら前川は話した。
連覇を狙う今季、指揮官・岡田彰布率いる阪神にとってもう1つの大きな目標は新戦力の発掘、育成だった。他にも候補はいたが、実質、現在も戦力として残っているのは前川だけだ。
特に後半戦である。佐藤輝明を4番に上げ、大山悠輔を5番にしたのも6番に前川を置けるからだ。「ジグザグ(打線)にできるやろ。前川が出てきたのは大きいよ」。岡田はそう評価していた。
だが、ここに来て打撃に悩んでいるようだ。「どこが悪いのかはよく分からないんですけど…」。率直にそんな話もしながら、1軍の壁の中でもがいている。ときに打てないのは前川だけでなく、佐藤輝も大山も、森下翔太も同じだが、まだレギュラーを確定させている立場でないだけに焦りもあるのだろう。
それでも思い出すのは、かつての主軸打者・金本知憲のことだ。ここでもよく書くが、金本は他の打者がみんな打つときは、なぜか打てなかった。逆にみんなが打てないとき、打てない投手を仕留める打者だったから尊敬されたのである。
前川にはそんなムードが漂う。前川が生まれた03年5月18日は金本が広島から阪神にFA移籍し、初めて巨人戦で本塁打を記録した日だ。だが別にそれに関係なく芯のある雰囲気に共通したものを感じるのだ。
週末は重要な広島3連戦だ。相手先発は23日から順に玉村昇悟、大瀬良大地、そして左腕・森翔平だ。前川スタメンの可能性が高い24日の大瀬良からは打率3割3分3厘…といっても3打数で1安打放っただけだが期待したい。
いずれにせよ前川だけでなく全員に重要なのは球の見極め、決断力だ。まずは22日のヤフーレを打てるか。1戦必勝。残り30試合すべてテーマは同じだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




