甲子園の主役に秋が来た。9回2死一塁。代打・岡田の二塁ゴロを見届けながら、履正社・寺島の笑顔は変わらなかった。「3年間苦しんで、一緒にしんどい思いをした仲間とやっと来ることができましたから」。大阪大会決勝は勝って泣いた左腕は、この日は笑ってグラウンドを去った。

 甲子園初先発の山口が2回途中4失点で降板。1死一、二塁で寺島は左肩が温まらないまま登板。流れを変えたい一心で投げた140キロ直球を有村に2点適時三塁打にされた。陶山にも左前に運ばれ、3点を失った。2日前の横浜(神奈川)戦完投の疲労があった。左肩は張り、右足の踏み込みは浅くなった。5回はスクイズ、暴投で2点を奪われた。

 それでも、6回から最速145キロの速球、98キロのスローカーブも使い、6回2死二塁から5者連続三振。幼稚園のころ、木登りに失敗して左手首の2カ所を骨折した。「骨折した場所は強くなるんですね」と父明宏さん(49)を驚かせる左腕に成長した。

 進路をプロに絞りながらも「今後のことは分かりません」とプロ宣言はしなかった。チームは国体(岩手)の出場が、寺島はU-18高校日本代表入りが確実。ただ、仲間のために死力を尽くした夏は終わった。愛犬イブの待つ家に帰る。【堀まどか】

 ◆近畿勢が姿消す 履正社が敗れ近畿勢6校が3回戦までに敗退。49代表制になった78年以降では昨年に続き9度目で、2年連続は初めて。