春夏通じて初出場の呉(広島)が劇的な延長勝利で開幕勝利を飾った。第89回選抜高校野球大会は19日、甲子園球場で32校が出場して開幕。呉は延長12回、6-5で至学館(愛知)を下し、2回戦に進んだ。9回に2点差を追いつき、12回は守備の乱れに乗じて2点を勝ち越し。先発池田吏輝(3年)がその後の反撃を1点に抑えて逃げ切った。

 呉のエースが投打でチームを引っ張った。立ち上がりが乱れて先制を許すも、その後はスライダーとチェンジアップを交ぜながら丁寧にコースに投げ分けて立て直した。2-4の9回1死二塁、8番上垣内が適時二塁打を放って1点差に迫ると打順は「取られた点を打って返そう」と意気込むエース池田へ。4球目の高めのスライダーを右中間へはじき返して同点に追いついた。

 投げ続けるエースに援護が届いたのは、延長12回。「よく投げてくれたから、池田の粘りに応えたかった」と新田主将。1死二、三塁から積極的な走塁で敵失を誘って勝ち越すと、5番柏尾のスクイズで突き放した。直後の反撃を1点に抑えた池田は「立ち上がりが悪かったけど、落ち着いて投げられた」と満面の笑みを浮かべた。中村信彦監督(62)は「池田が踏ん張ってくれた」と160球を投げ抜いた左腕をたたえた。

 ちょうど1年前、すでに背番号1を背負っていた池田は感染症による脾臓(ひぞう)肥大を患った。1~3月の約3カ月間、野球から離れて自宅療養。落ち込む姿は見せなかったが、野球への思いを強くした。「野球が好きだ」、「迷惑を掛けたから、早く戻ってチームに貢献したい」。その気持ちが今も池田を支えている。

 63年の呉港以来、54年ぶりに呉市から出場した呉に同市から大応援団が駆け付けた。6000人で埋まったアルプスで応援した小村和年市長(69)も「市民が一番喜んでいる。呉市の誇りですし、感無量です」と目を細める。大応援団に初勝利を届けたチームの次の相手は優勝候補に挙げられる履正社だ。「自分の力がどこまで通用するか楽しみ」。病を乗り越えたエースは夢舞台を全力で楽しんでいる。【中島万季】