昨夏大阪大会決勝での悔しさを味わった男のバットが火を吹いた。3-3の同点に追いつかれた直後の5回、大冠のエースで「9番打者」の村上遼成投手(3年)が2死満塁から左翼スタンドに飛び込む決勝の満塁弾を放った。自身初めてという本塁打に「しっかり低い当たりで後ろにつなぐ意識で打ちました。ちょっとつまったんですけど、入ってくれて良かったです」と笑顔をみせた。

 昨年大冠高校は公立校として19年ぶりの決勝進出を決めた。甲子園行きの切符をかけた戦いで、大阪桐蔭を8-10とあと1歩まで追い詰めた。村上は同試合の1点を追う8回に4番手で登板し、1イニングで5点を奪われた。「今でも記憶にありますね」と悔しさをにじませた。

 先発を任された村上は6回2/3を投げ、2被弾を含む7安打4失点。「本塁打2本っていうのはダメだと思うんですけど、チーム内で8点までOKと言われていたので。意外と気楽に投げられました」と前向き。その理由として得点力の高い打線がある。昨年大阪の強豪校を次々に打ち崩した打線は健在。大手前相手に12安打で10得点を奪った。チームは昨年同様に平日1000スイング、土日2000スイングを今季も継続。そこに得点を奪う裏付けがある。

 この日は昨年大冠を大阪大会決勝に導いた前年度主将の猪原隆雅(18)、当時エースだった丸山惇(19)らOBも応援に駆けつけた。猪原は後輩たちに向けて「夏の大会は実力うんぬんよりも勢いが大事だと思うので、積極的に自分たちらしさを出してやってほしい」とエールを送った。

 村上は「目指すところは甲子園です」と力強く宣言した。今年も屈指の打撃力を誇る大冠が、公立校として90年渋谷以来、28年ぶりの甲子園出場へ向け、旋風を巻き起こす。【古財稜明】