1984年夏以来の甲子園出場を目指す上尾(埼玉)の強さの秘密が垣間見えた。同校グラウンドで行われた5日の練習。平日にもかかわらず、多くのOBが姿を見せていた。人数にして7、8人。大学でプレーしている選手から70歳を超える現役コーチまで年齢層はさまざま。打撃や守備、ピッチングとおのおのの得意な領域を後輩たちに教えている。
一体なぜ-? 高野和樹監督(58)は「平日でも、うちはこのくらい集まりますよ」と明かした。「うちのOBたちは温かく見守ってくれる方ばかりで本当にありがたい」と感謝した。
一方で、OBたち自身も特別な思いがあり母校に帰ってくる。上尾市内で中学校教諭を務める大野優さん(39)は「来週から中学の総体が控えているんで。自分の気持ちを高めるわけじゃないですけど、エネルギーをもらいに来ました。『聖地』なので気が引き締まります」と話した。
昨秋の埼玉大会では公立校で唯一の4強入りを果たし、21世紀枠の関東・東京地区候補にも選出された。今春は準々決勝で昨夏準優勝の昌平に敗れたが、1点差と強豪私学にも決して劣らない。
悲願の甲子園へ。高野監督は1点にこだわる。「勝負の神は細部に宿るぞ」とノック中に盛んに声が上がった。「1試合にどれだけの思いを詰め込めるか」。かつて甲子園を沸かせた名将・野本喜一郎元監督の後を引き継いだ。「全国各地から応援の電話がくるほど、上尾を応援してくれる人がこんなに多いんだ」と期待の大きさを実感しているからこそ、妥協を許さない。
私学全盛の埼玉を勝ち抜くべく、三塁側ベンチの壁には書道部が手掛けた「突破」の大きな文字が掲げられている。OB全員が待ち望む42年ぶりの甲子園出場に向け、上尾ナインが己の限界に突破する。【会田京叶】

