侍ジャパンが負けた。東日本大震災からちょうど4年の特別な日。必勝を期して臨みながら欧州代表に敗れた。先制を許し、追い上げる苦しい展開。欧州勢とも力の差がないことを痛感させられ、今秋に初開催予定のプレミア12に向けて、課題が浮き彫りになった。

 勝たなければいけなかった。試合前のミーティングでは小久保裕紀監督(43)が「今日は特別な日。何が何でも勝とう」と鼓舞した。地震のあった午後2時46分には、野手陣で黙とうをささげた。いまだ復興の進まない人たちへ、エールを送れるような試合を目指したが、結果は伴わなかった。小久保監督は「内容どうこうより勝たないといけなかった。悔しい」と口元を引き締めた。

 侍ジャパンらしい緻密さを発揮できなかった。「初球からどんどんいけ」と指示の出ていた打線は、緩い球を強振しアウトを重ねた。試合後、指揮官は「個でいくより線でいった方がいいと思った。負けられないプレミア12では、センターから逆方向を狙う指示を出す可能性もある」と、打線のアプローチの再考を余儀なくされた。

 急造チームを機能させられなかったことも小久保監督は反省した。3回、先発松葉が3ランを打たれる直前、二塁走者のリードが大きいのに気付いていた。「ああいうところで苦しんでいる投手を助けることができなかった。チームとしてピックオフプレーを入れられなかったのは監督の責任」と、今後の課題にした。

 嶋は「昨年の日米野球で勝ち越して、このままいけば勝てるんじゃないかと、正直、僕自身にも隙があった」と打ち明けた。負けたことで、世界で戦うことは簡単ではないという思いを新たにした。見回すと、周りの選手もそういう顔だった。嶋は「秋のプレミア12に向けて、気を引き締めて臨めるんじゃないかと感じる」と続けた。「力の差は少ない」と小久保監督も言った。収穫を挙げるなら、この2試合で侍ジャパンから、油断が消えることかもしれない。【竹内智信】

 ◆欧州チームに初黒星 プロが参加するようになった00年シドニー五輪以降、日本代表のトップチームが欧州のチームに負けたのは初めて。五輪はシドニー、アテネ、北京の3大会でオランダ、イタリア、ギリシャと対戦して6勝0敗。WBCは13年2次ラウンドでオランダと2度対戦して2勝。五輪ではプロが参加する前の大会でも欧州のチームには5勝0敗だった。