広島クリス・ジョンソン投手(30)は、最後の山田を空振り三振に仕留めた瞬間、抑えていた感情を爆発させた。9回1安打無失点デビュー。初登板初勝利初完封で、緒方新監督に初勝利をプレゼントした。193センチの長身左腕は口ひげをさすりながら、低い声で振り返った。

 「ストライク先行でいけたし、全球種でカウントをとれた。早い展開にしようと思っていたんだ」

 プロ野球史上初の快挙だった。許した走者は7回の山田の右前ポテンヒット1人。自身初の無四球での完封だった。デビュー戦での準完全試合はプロ野球の歴史でも初。2種類のカーブにスライダー、チェンジアップ、ツーシームと変化球が決まり、球持ちのよさで差し込んだ。

 お立ち台では「早く帰って夕飯を食べるよ」。3万1043人超満員のスタンドに、婚約者カーリン・コマーさんがいた。3日に来日し、ともに生活している。「彼女に初登板を見てもらえたのはうれしい」。アツアツな日常があってこその快投だった。

 バットでも7回に左前へ初安打。記念球はウイニングボールとセットで手元に届いた。「日本で初めて勝ったボールだから、記念に飾ろうと思う。でも安打のボールの方が特別さ」。緒方監督も「言うことなし」とほめた。投手陣に頼れる男がまた1人加わった。【池本泰尚】

 ◆クリス・ジョンソン 1984年10月14日、米国生まれ。ウィチタ州立大から06年ドラフト1巡目(全体40番目)でレッドソックス入団。13年にパイレーツでメジャーデビューし、昨季はツインズに所属。メジャー未勝利。193センチ、93キロ、左投げ左打ち。今季推定年俸7000万円。婚約者のカーリン・コマーさんのブログ「チョップスティックス」をPRしている。URLはhttp://www.chopstixchic.com

 ▼ジョンソンが初登板で1安打完封勝ち。初登板完封勝利は08年大場(ソフトバンク)以来でプロ野球29人目。外国人投手では95年チェコ(広島)97年ギブンス(西武)に次いで3人目になる。このうち1安打以下は、1安打の36年藤村富(タイガース)とノーヒットノーランの87年近藤(中日)に次いで3人目だが、ジョンソンは許した走者が安打を打たれた山田だけ。藤村富は4四死球、近藤は2四球があり、許した走者1人だけで完封する「準完全試合」を初登板で記録したのはプロ野球史上初めてだ。