後半戦開幕の巨人戦で、虎が最悪の結末に泣いた。同点の9回に勝ち越され、まさかの逆転負け。最下位転落の後半戦発進となってしまった。9回の失点に絡んだのは、鳥谷敬内野手(35)の野選。バットでは3三振を含む4打数無安打と、虎逆襲のキーマンは攻守ともにさえなかった。今日19日こそ、今季聖地初G倒を見せてくれ。

 借金10から仕切り直すはずの後半戦初戦は、今季の現状を物語る、もどかしさばかりが充満した。2分半の敗戦会見で、金本監督はしきりに首をかしげる。「見ての通りだから…」。1-1の接戦。9回無死一塁で、遊撃鳥谷のワンプレーが悪夢の引き金になってしまった。坂本が打った高いバウンドのゴロを捕って二塁にトス。代走鈴木が快足を飛ばして滑り込んでくる。際どいタイミングだが、真鍋二塁塁審は、ちゅうちょなく両腕を広げた。

 西岡へのトスは、わずかに弱かった。1死一塁になるはずが無死一、二塁の窮地に。守護神ドリスも耐えきれず、阿部に決勝適時打を打たれた。後味の悪い幕引きに、金本監督も渋い表情だ。「何試合か前に危ないぞと注意したんだけどね、本人には。出たわね、今日…」。10日広島戦の1回2死満塁で戸田のゴロを二塁にロングトスし、間一髪のアウトになった。遊撃鳥谷の二塁へのトスが鋭さを欠き、危ういタイミングでアウトになる光景が今季何度か見られた。指揮官も不安視していたプレーが勝負の土壇場で出てしまった。

 ゴールデングラブ賞4度の名手が犯した痛恨の野選だ。鳥谷も「パッとしっかりいっていればアウトだった。トスが緩くなってしまった…」と責任を背負う。前半戦のラスト2戦でヤクルトを逆転し、最下位から脱した。指揮官は後半戦のキーマンとして何度も「鳥谷」の名前を挙げた。チームも、そして不振が続く鳥谷も4日間の休養で変わり身を示すはずだったが、重苦しさは変わらず、再び最下位に転落してしまった。

 打撃でも精彩を欠いた。昨季、13打数無安打の天敵マイコラスに、またも封じられた。1回は、わずか3球の見逃し三振に終わるなど4打数無安打3三振。金本監督も「3三振? そのうち見逃しが2つというのはね、やっぱり…。上がり目を期待したんだけどね」と悩ましげ。この日でプロ通算1102三振となり、球団史上最多になった。長く、第一線でプレーし続けるからこその「傷痕」だろう。だが、今年負っている傷は、思いのほか深い。

 不振にあえいだ前半戦はナイターの午前中から体を動かすルーティンを貫き、試合後も無人の室内練習場で打ち込んだ。もがき苦しみ、汗を流しても、まだスランプから抜け出せない。鳥谷、そしてチームが迷い込んだトンネルの出口はまだ見えない。【酒井俊作】

 ▼鳥谷が3三振を喫して通算1102三振となり、桧山1100三振を抜いて球団最多となった。なお鳥谷の1試合3三振は今季最多で、15年6月14日オリックス戦3三振以来、プロ32度目。自身最多は1試合4三振で、2度。

 ▼鳥谷は巨人マイコラスに対し通算16打数ノーヒット。打数の半数となる8三振と徹底的に抑えられている。

 ▼阪神が後半戦黒星発進。球宴明け初戦は3年連続甲子園での巨人戦。14年7月21日は3-0で勝ったが、15年7月20日は、今回と同じく先発マイコラスに抑えられ0-2で敗れていた。