プレーバック日刊スポーツ! 過去の10月31日付紙面を振り返ります。2014年の1面(東京版)はプロ野球ソフトバンクの日本一でした。
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<SMBC日本シリーズ2014:ソフトバンク1-0阪神>◇第5戦◇2014年10月30日◇ヤフオクドーム
ソフトバンク秋山幸二監督(52)が、最後の本拠地ゲームで日本一の舞だ。今季限りの退任を表明しており、この日の「SMBC日本シリーズ2014」第5戦がヤフオクドームでのラストゲーム。第2戦から4連勝で一気に阪神を振り切って、自身にとって2度目の日本一を決めた。
9回1死満塁のピンチをはねのけ、頂点に立った。駆け寄る教え子たちの笑顔に秋山監督も笑った。涙はない。指揮官として今秋3度目にして、最後の胴上げ。信頼を置く選手たちに身を委ねた。やっぱりドームは広い。目いっぱい放り投げてくれるが天井は遠い。
「(幕切れは)信じられないですね。(地元)ファンの皆さんの前で日本一。うれしい。最高です。何も言うことないです」。10度舞った。
アッという間に過ぎた6年だった。選手の成長を自分のことのように喜んだ日々。「1人1人が技術を高めれば、チームも高まるだろ」。テレビ番組で見た全盲のピアニスト、辻井伸行さんの姿に胸を打たれた。「人間って才能を引き出すことができるんだ」。選手を伸ばしたい一心で、ついコーチの職域に踏み込むことも。フォームの手本を見せようとブルペンで剛球を投じ、20メートルダッシュで外国人選手に勝ち、フリー打撃で柵越えする52歳。希代な「動ける監督」だった。
王政権に比べ、強く日本一を要求された。特に、今年は大型補強があった。誰も推し量れない重圧。心がささくれ、ベンチを蹴飛ばすことも。野球を離れた指揮官の自宅に小さな癒やし係がいた。ミニチュア・ピンシャーの愛犬セブン。「ご飯の時だけ俺のところに寄ってくるんだけどね」。引退後、千晶夫人の勧めで飼い始めた先代の名前がラッキー。「2匹でラッキーセブンでいいだろ」。少し誇らしげに言った。「俺は絶対にしない」と言っていた秋山監督のたった1つの験担ぎだったといえる。
監督就任前、司馬遼太郎著「人間というもの」を手に取った。同氏の作品から名言を厳選した1冊。敵を知る知恵や兵法の本質、行動、何より人間とは何なのか。「何でも吸収しないと」。人知れず内面を高める作業を重ね、巨大戦力を束ねてきた。
6年を一区切りに退任すると腹をくくった。CS開幕前に表面化すると「けじめをつけるしかない。俺がチームを扱っている。動揺させてはいけない」と球団を押し切り、自ら会見を開いて騒動を収束。チームを短期決戦に集中させた。素早い決断がCS突破、日本一に誘った。いつだって試練は心の砥石(といし)だった。
3度のリーグ優勝、Aクラス5度、日本一2度。選手時代と同様、輝きを放った。現役引退時は「野球選手を卒業します」と言い、今回は「リセット」。また、普通の秋山幸二に戻り、しばらく、家族とセブンとゆっくり過ごす。
選手、コーチたちの笑顔が見える。ファンがいつまでも奏でる「秋山! 秋山!」のコールが耳に響く。秋山ホークス最後の勝ちどきは心に染み込むように、しかし、力強く、広い、広いドームに上がった。
※記録や表記は当時のもの



